矢谷啓 2014-05-13 19:43:45 |
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啓…啓、お願い…
(何かを失うことに慣れている心が何かを失うことを恐れている。兄が死んだ時も親に拒絶された時も、失ったものは家族の絆だとか情だとかたくさんあったはずなのに、相手を失うことがこんなにも怖いなんて。その存在を確かめるように何度も何度も相手の名前を呼んで。力が抜けた腕から相手のものとも自分のものとも言えない血がついたカッターがすべり落ちる。手のひらが血にまみれていることは容易く予想出来る、なのに抱き寄せられた自分の体が震えていることに気付くのには時間がかかってしまった。「本当に、本当にどこにも行かないで。お願い一人にしないで。そばに居て。ダメな子だけど捨てないで」きっとこれを言いたかったのは幼い頃の自分だろう。そんなわかりきったことを言ってしまうなんてどれだけ相手に甘えれば自分は気が済むのだ。バカだ、こんなに相手を困らせて。そんな風に思っていれば、笑がいないと苦しい、いう相手の言葉が心にストンと落ちてきて。「啓がいないと、オレも苦しい…痛いんだ」これは共依存だろうか、それでもいい。誰かに求められるならそれを満たすことで自己満足に浸れるだろう。いいじゃないか、自分を必要としてくれる人が見つかったんだから。
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