矢谷啓 2014-05-13 19:43:45 |
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俺は体だけは丈夫だから風邪なんて引かないよ、多分。…でも笑がいうなら気を付ける
(相手が自分の心配をしてくれるなんて始めのころを考えると想像も出来なくて、調子にのってしまいそうになる。人の名前も甘い言葉も彼の前だと自然に零してしまっているからこわい。どこかで歯止めをかけなければと思ってもやめられず相手を遠ざけるように使っていた敬語も確かめるようにではあるが徐々に減っていて。「…嬉しい?」と相手の複雑な微笑みを見ては無気力な瞳で見つめて、無意識に語尾を上げれば相手の微笑む口元をまるで愛おしむように撫でる。嫌味ばかりの自分がこんなにも人が変わってしまったら相手は気色悪いといって避けるかもしれないと不安に思う。人に優しくして不安に思うなんてやはり相手だけで今まで蓋をしてきた欲があふれ出すぎないようにするのに努めたが、甘ったるいことに変わりなくて。どうしようもなく止められず、「…啓。」啓のために、なんて言って欲しくなり欲張りと分かっていながら自然と自分の名を口にして、照れのでない無表情をいいことに相手をまっすぐに見つめて。こんなに気色悪いのは多分今だけでちょっとしたら気持ちは冷めないにしても淡々と普通に何事もなかったように話せる気がする。今は自分でも気持ちの整理がついていないのだと言い聞かせ「俺となら食べられるよね」とこの流れに乗っかって言えるところまで言ってしまえと自分も食べられるかも分からないのにそんなことを口にする。すぐに相手から視線をそらせばそのままパスタにしては噛みすぎなのではと思えるぐらいよく噛みながらゆっくりと食べ進め久々にこれだけの量を完食するも全く苦ではなく自然とお腹はそれを受け入れて「ごちそうま。おいしかった…食器は洗わせて」と再び丁寧に手を合わせては平坦な口調でいい、御馳走になるだけでは悪いと食器洗いを願い出ながら、変に真面目な部分が出るのもやはり照れているからなのかも思ってしまったりして
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