矢谷啓 2014-05-13 19:43:45 |
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(誰に看取れられなくてもいい、相手さえ居てくれればそれでいい。相手と出会う前は自分が死んでも変わらずに世界は回り続ける、まるで最初から自分なんて存在していなかったかのように日常が進んで行くんだと思ってた。しかし今は違くて、自分の死を感じて何かを思ってくれる相手が居る。他人からしてみればどうでもいいことのように思えるこの会話にこそ意味があって、一つ一つの言葉、表情が何よりも大切で。先に死を迎えるのはどちらかわからないが、相手だとしたら月並みな言葉だけど狂ったように泣くだろう。何処かに相手の幽体が居るのなら早く体に戻さないと、なんて考えて居るはずもない相手を探しては寂寞な感情に襲われてビニールテープを首に巻くか舌を噛み切るはずだ。「死んでるみたいだよね、でもちゃんと生きてるんだよ」甘い言葉を零す相手に苦笑しながらそう述べると以前生徒にそんなこと言われたな、なんて自分が口にした言葉を心の中で復唱してしまい。「だから、大人なんだってば…そうだね、色々教えないとどっちも痛い思いするからね?」相手の表情と小声になったのを見た限りあぁ、あのことか、と当たりを付けてはそう続けて。何から教えればいいかわからないが、相手が困ったら聞いてくるだろうという独断をして。「…愛してる…」このムードに流され自然と妖艶な笑みを見せては舌が伝う手を相手の後頭部に回して自分の方へ引き寄せると口付けて。未だに慣れない口付けに次はどうしたらいいんだろう、なんて考えてしまう自分がいて
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