矢谷啓 2014-05-13 19:43:45 |
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(相手の咳き込む姿に自分どれほど残酷なことをしたのかを受け止めて息が詰まるが、相手に手を握られ、大丈夫、生きていると言われただけで呼吸が楽になる感覚がするがどうしても相手の優しさから作られる笑顔を見ることができず首を振り拒絶してしまう。相手は思い出したくない過去の闇に踏み入れてまで自分を頼ってくれて、今相手の不安を取り除くべきは自分のはずなのに逆の立場になっているこの不甲斐なさに唇を噛み締める。でもこれ以上は自分を追い込んだところで何の解決にもならなくて、相手が傷付いた時、同じように自分も苦しくて依存し合うのはもう痛いほどに、喜々とするほど身に染みているはずで。手当てされる腕をどこか人事のように眺めながら握られる冷たい感触だけが不思議とクリアに感じてもっと、もっとその冷たい体温を感じたいと貪欲になって「笑…抱きしめてもいい?」平坦な口調にならないように僅かに語尾を上げさせて言えば、相手の答えを待たずにまだ僅かに震える体で抱き寄せて「もうおれを受け入れないで…笑を失いたくない。でも、俺に笑をずっと愛させてほしい。愛してるって言わせて」次、またいつ気が触れるか分からない不安定な己は拒否して欲しい。いつか殴ってくれてと言ったように本当に殴り飛ばして欲しい。その上で自分に愛を奏でさせて欲しいなんて、これこそ本当の我儘を言えば抱きしめる腕に少し力を込めて
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