矢谷啓 2014-05-13 19:43:45 |
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(急にたくさんの空気を吸い過ぎたせいか、何度か咳き込んでは震えている相手に近寄り、そっとその手を握る。自分自身の腕に爪を立てる相手を落ち着かせようと、「大丈夫。」と。きっと首を絞める相手だって怖かったはずで、酸素を求めて僅かに震える自分の身体より相手のほうが辛く、苦しい思いに駆られているんだろう。「啓、大丈夫。オレは生きてるよ」謝る相手に何を伝えたらいいかわからずに回転の悪い頭を振り絞って出た言葉はそんなもの。僅かに笑みを作りながらそれでもなお、愛してるよ、なんて何度も言ってみせる。上辺だけではなく、本当に愛しているのだ。これが相手の愛の形なら受け入れる、相手の憎悪の感情がそうさせたのなら自分にだって責任はるはずだ。血が滲む相手の腕に食い込んだ爪を優しく除けては「痛いから止めよう?ほら、見せて」と言って腕を引き、ポケットから絆創膏を出しては貼って。一応保険医だから絆創膏は持ち歩いてる、まさかこんなときに役にたつとは思わなかったが。何を言えばいいんだろう、わからなくて今はただ、相手の手を握ることしか出来ない自分に腹が立つが「…何もいえなくてごめんね、啓。愛してるよ。」とだけ述べては笑ってみせ
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