矢谷啓 2014-05-13 19:43:45 |
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一人じゃないから…俺と一緒に、
(もう充分頑張っている相手にこれ以上無理して頑張っては欲しくなくて、だけど相手の気持ちは尊重したいため“一人ではなく俺と頑張ろう”と言って。恐らく相手も同じ意味合いで言ったのかもしれないがお互いの不安を取り除くために言葉にして。夜は怖い。一人、闇の中で寝付く時間、自分の中に眠る影が大きくなり目を覚ます。きっと相手ももう一人の、または何人もの彼と戦いもがき苦しみ眠れない夜を過ごしたに違いない。このまま目が覚めなければと願い深い闇に自ら進み溺れて、自暴自棄になりその中に偽りの安息を見いだしては生きていることの虚しさと絶望を味わってきたのではないか。毎晩、死にきれない自分を呪っては自分の呼吸する音と鼓動の騒音の中で眠りにつく。自分も同じだからと分かった気でいる自分が憎たらしい。互いに夜を、明日へ繋がる喜びと感じられたらどんなにいいことか。相手の想像もできない失望を自分が希望に変えられたらなんてドラマの腐ったセリフのようなことしか考えられなくて…。相手に唇を奪われピクリと反応するが、幾度となく重ねられる口付けに応えるようにこちらも相手の頬に手をあてがい僅かに上向かせながら覆い被さるようにしてその唇を奪う。キスの方法を教えるように始めは確かめるように啄み、徐々に深く長く唇を覆うような激しい口付けを。流石にそれ異常深くキスをするとまた相手に負担をかけてしまうと回らない頭でストッパーをかけ理性をどうにか保つと綺麗な黒髪を流すようにさらりと撫で上げ、やはり酔っぱらっているのか妖艶に微笑んでは「いいよ、笑、良かった…」と生理的に潤んだ瞳と僅かに紅葉する顔で色っぽく囁く、勿論記憶には残るだろうが完全なる無自覚であり誘っているわけでも何か思惑があるわけでもなく普段通り言っているつもりで、しかし端から見ると誘惑しているようにしか見えない物言いで。無自覚であるが故に醒めたらからかわれるなど一切考えておらず、無表情に近いがいつもよりもどこか無邪気ともとれる表情で相手を愛おしげに見つめ額を合わせて
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