ヌシ 2013-10-31 00:02:56 |
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──はい。有り難う御座います。(耳元で言葉を返した後、そわそわと耳に手を添えだした彼を見て口角を上げる。意味は…、多分分かって無いよな、と淋しさも残るが彼にはまだ言う訳にはいかない。天然で年上のくせにどこか危なっかしい所が目が離せなくて、ついついお節介を焼きたくなる。なんというか、母性本能か。あ、否、自分は男だけど。まあ、それが擽られる感じがする。やはり此処は、マイペースではなく相手のペースに合わせて物事を進めるのが良いだろう。思案しているうちにまた別の駅に停車して人の出入りが激しくなる。より車内が混雑する中、彼と鞄共々座席の仕切り壁の方に押されると、今度は吊革ではなく網棚に手を掛ける。もう少しで着いてしまう等名残惜しそうに思っていると彼から“何を得したか”と聞かれた。やはりそうきたかと言わんばかりに溜息を吐く。自分に此処まで言わせる人はそう居ないだろうな。「──何を得したか、って。俺が貴方に抱きつかれてラッキーってことですよ。あとは自分で考えて下さい。」と彼の発想力を試すような言い方をする。これで分からなかったら色んな事を諦めた方がいいだろう。名前や勤務先を知るのも、自分と密接な関係に成りうる人であるかもしれないということも。)
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