ヌシ 2013-10-31 00:02:56 |
通報 |
──ふぅん…、じゃあまた会えるかもしれないですね。飲み会が無い日は。(と、思ったことをそのまま口に出してしまった。確かに今日はいつもと同じ電車に乗っていて、特別なのは服装だけなのだから。基本は私服だが、こうやって外部から講師を招いてセミナーが開かれる時はリクルートスーツを纏っている。月に二度程のこの講習は自分は嫌いではない。将来や進路のことは兎も角、身が引き締まるし、スーツ慣れしておくのも悪くはないと思っているからだ。私情はそこまでにして、何処の駅から通勤しているのかくらい教えてくれるだろうか。そういえば名前も知らない。痴漢に遭った彼にナンパ紛いなことはしたく無いのだが聞いてみたいというのが本能。本当に自分はどうしようもなく子どもだな、と内心思いつつ溜息を吐くのと同時に彼を見下ろす。と、身長差で彼の腰付近に何処からか伸びている腕が見えた。…またかよ。「…へーえ、そうなんですかー。」鞄を自分の脚と脚の間に下ろして抑揚の無い棒読みの返答を漏らす。空いた両手を分断に使い片方は、右肩に添えられた彼の左手首を捕まえて、もう片方は彼の背後に回して此方に抱き寄せ。この人はもう…、鋭い視線を浴びせるように彼を見下ろす。)
トピック検索 |