ヌシ 2013-10-31 00:02:56 |
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──ははっ、色んな意味で心配? なんですかそれ。(“色んな意味”とは、両性愛者の自分を心配だ、ということなのだろうか。今日初めて会った人にカミングアウトして、普通に受け入れられて、今に至っている。きっとこれも彼だからだろう。突っ込むことはせず、くすくすと笑い流す。年上相手に“心配”は少し生意気だっただろうか。若干不機嫌めいた彼の表情、それはそれで悦いと思ってしまう自分はやはり可笑しい、かな。そんな彼が突然自分の額にデコピンをしてきた。…なんとも彼らしい。と、小さな遣り取りでも楽しいと思える自分に気付き、そうこうしているうちに□□駅に着いてしまったようだ。だが、電車は次第に停車するがこの混雑故に降り口付近は大渋滞。そして人口密度が非常に高い。「──繋ぎます?」自身の右手を揺らりと顔前にちらつかせて、そんな冗談を真顔で言ってみた。彼がどんな反応するのかが、ただ、みたいだけに。…でも、このまま改札を出てしまったらそれっきりかもしれない、この浅い関係を変えるには自分から踏み出すことしか思いつかなかった。)
まるで迷子みたいに…まあ、助かるけどさ。
(人混みに紛れないように手を繋ぐ、と言えばどうしても彼氏彼女よりも迷子の子供相手に話すようなイメージが強いらしく、先程生意気だとたしなめたばかりなのにと不服そうに相手をじろりと軽く睨み。不満げに唇を尖らせたままぶつぶつと声を漏らしはしたものの、平均的な身長である自分からしてみれば何だかんだと言うものの自分よりかは人波に流されにくいであろう長身の彼に掴まっていられるのは有り難いもので。少しだけまだむすっとしているものの差し出された手にそっと手を差し出し、そのままなるべく離れにくいようにと指と指の間に交互に指を絡めていくようなしっかりとした握り方で対応すると片手で鞄を抱え直し。駅に到着すると共にざわつきだした人々に僅かに身を固くすると「…君、うっかり足踏まれないように気を付けろよ?」との言葉を残しながら少しだけ強張り気味なものの和ませるのが目的なのかにいっと笑って見せて。)
──迷子だったら俺が湊さんの保護者ですか?(彼の例えに突っ込んで冗談を言う。こんな事しか言えないから背格好のわりに子どもっぽいのだろうか。それでも、此方を睨んだり、唇を尖らせたりする彼を見てしまえば…生殺しだ。もじもじと躊躇しつつも自分の手を取ってくれたことが嬉しかった。ついでに、指と指を絡めてきた彼はどういうつもりなのか分からず思考が止まる。これは良いように解釈していいのか。否、この人のことだ。どうせ、“こっちの方が離れないだろ”とか“なんとなく”とか言うに決まってる。もう、後者に至っては本当に生殺しだ。自分も鞄を空いた手で持てば彼と目を合わせて「──俺は大丈夫ですよ。あの、湊さん。これ、恋人繋ぎって知ってます?」あえてのこの質問。自分と繋がれた相手の手を掬い上げて彼の手をきゅっと握る。口元に笑みを含ませて、いかにも、余裕ですと言わんばかりに尋ねた。内心浮ついているのを悟られないように。)
…なに、村田君こんなので意識しちゃってんの?
(此方の例えに冗談っぽく返事をする彼をたしなめるように軽く肘で腹の辺りを小突いてやれば、そのすぐ後相手の力で不意に握った手を持ち上げられ。"恋人繋ぎ"とやらは知らなかったが、成る程カップルが離れないようにするには確かにぴったりな握り方だと少し納得してしまい。相手がバイだということは先程聞いたため知っているが、この発言や出会ってからの行動諸々を考える限り恐らく自分も対象範囲に該当してしまっている様子が窺え。だからといって先程のようにただ顔を赤らめ恥ずかしがっているなど年上としての威厳に関わると考え、一瞬考えてから手をぎゅっと握り直すと余裕ぶった相手の顔を見つめ。ふっと気を抜いたように出来るだけ自然な笑みを浮かべながら悪戯っぽい言葉で挑発じみたチョッカイを出してやれば、開いた電車の扉から出ようとする人混みの中に相手の腕を引きながら入っていき。)
──そうですよ、意識してますよ。湊さんは余裕みたいですけどね。(相手に問われた質問には素直な気持ちを伝えた。どこか挑発めいた発言と、脇腹を小突く動作に彼の印象は一転した。天然でどこか悪戯っこのような、何とも興味深い。それともわざとこんな態度を取られたのだろうか。あまりに驚きで暫く思案しつつ、彼に手を引かれて導かれ、車両を降りる。人混みに飲まれながらも改札を目指して彼とホームをつき進む。エスカレーターわきに差し掛かるとき彼の手を引いて人混みから避け、ふらりと壁に寄りかかれば「──やっぱ、凄い人ですね。あの、このまま帰っちゃいます? 俺は改札の東口の方なんですけど。」遠回しに家の方面を尋ねる。何でも良い。次いつ会えるか不明な彼を引き止めたかったのと、ただ単に聞きたかったのと半々くらいだろうか。未だに彼の手は握ったままで、小首を傾げて視線を向ける。…にしても変な学生だな。彼の中でそんなイメージだけでもついていて欲しい。簡単に忘れないようなイメージを。)
え、あ…そ、うなんだ…へぇ…。
(ちょっとした悪戯心からきたチョッカイだったためちょっと向きになって否定でもしてくれればそれで満足だったのに、予想に反して大分すんなりと肯定の言葉を発してきた相手に思わず戸惑ってしまい人混みで表情が読めないのを良いことに曖昧な相槌と共に困ったような表情を晒して。人混みから抜けホームの開けた場所に出るとふらつきながら壁に寄りかかった相手に思わず手を差しのべるべきか、と迷うように手をさ迷わせながら心配そうに眉を下げて。「え、ああ…うん、俺も東口。〇丁目の公園の辺りに住んでるんだ。…それより、村田君大丈夫か?結構人混み辛かったみたいだけど…。」彼の質問に応えぼんやりとした家の付近の説明をし。それよりも少し疲れた様子の相手が気になるらしく、やはり社会にまだ出ていない学生にはこういった混雑は相当疲労するものなのだろうか、なんて考えながら気遣うような様子で相手の顔をそっと覗き込んで。)
──なーんて、言われたら流石に困っちゃいますよね。(相手からの曖昧な返答に戸惑いつつもこんな軽はずみな言葉を掛ける。少し困りがちなその返答と、場の空気と調和されてしまったという虚しさに眉尻を下げつつも、変わらぬ声音で発した。壁際にてふわりと手を離せば咳払いをひとつ。どうやら彼は自分が人混みに酔ったと思っているようだ。気を遣ってくれる優しさが今は自分にとっては辛さにも感じてしまう。顔を覗き込まれては「──大丈夫ですよ。 あ、俺のアパートはその公園突き進んで、コンビニの向かいですね…。」と、返す。自宅も近かったのか。なのに何故今まで見たことも無かったのだろう。これだけの距離なら絶対何処かで見たことがあると思うが…と、不思議がっているとふと浮かんだ言葉は「良かったら、そこまで、一緒に行きませんか?今日だけでも。」とポケットの中から定期券が入ったパスケースを取り出して顔横で軽く揺すって見せ。)
…そっか、じゃあ途中まで。おじさんが送っていってあげよーう。
(戸惑ってしまった自分を気にかけるようにしながらも何処かしおらしさの感じられる相手の表情に、迂闊な行動を取ってしまったと罪悪感を覚え。それでも一先ず彼の気分が悪いわけではないと分かっただけ救いだと覗き込むような姿勢を戻しながらまだ少しだけ戸惑いが後を引いたような微妙な表情で微笑んで。罪滅ぼしだなんて語るつもりはないが帰り道を共にすることを提案する彼に軽く頷いてやりながら場の雰囲気を何とか先程までの和やかな調子に戻そうとおどけた様子で言葉を返して。そのまま相手についてくるように促す意味で視線を一度向けてから先導するべく先に歩きだすとパスケースを鞄から取り出しながら改札口へと向かって。)
──送るだけ? 寄ってってもいんですよ。(どうやら彼に気を使わせてしまったらしく、雰囲気を変えようと“送っていく”と言った彼に笑みを含ませて冗談を言ってみた。それと同時に彼の上着の裾を摘んでくいっと引っ張ってどこか悪戯めいた子どものように舌をぺろりと出してみる。…これで何事にも気にすることなく過ごせるだろう。彼も何も気にしなくなってくれればいいのだが。きっと優しい人なんだろう。天然で良心ときたら、最早その手の類の者からしたら……、やめよう、彼に少なからず失礼になってしまう。自分の前を歩きだした彼に続いて付いて行き、定期券をかざして改札を抜ける。他にどんな話をしようかと、考えながら歩くもののこういうときに限って中々思いつかない。やっとの事で下記の質問を思いついた。「あの、湊さん。朝早いんですか? …何時の電車乗ってるのかなって思って。」と、久し振りに付けた腕時計を眺めながら。)
(/時間空いてしまってすみません!
流石にそれは迷惑だろうし遠慮しておくよ。…というか村田君、もうちょっと警戒した方がいいんじゃないかな?出会ったばっかりのおっさんなんて部屋に引き込もうとするなんて、痛い目あっても知らないよ?
(服を引く軽い力を感じ緩く首を傾げれば舌を出しながら悪戯っぽくこちらを誘う相手、まるで仲良くなった友人を部屋に呼ぶような軽い調子に少しだけ困り顔で首を振ると誘いを断り。同年代ならこの程度のこともアリなのかもしれないが此方は所謂おっさんで、自分はやましい思いなどないが他の人間なら彼のような瑞々しい若者にやましいことを仕出かそうと悪意を抱いている者が居ても可笑しくないのだ。忠告の意も込めて少しだけ怒ったような調子で応えると言い聞かせるように立てた指を相手に向け差して。改札を抜けてから思い出したようにこちらに語りかけ始めた彼を見て、もしや話し相手に、と頼んだことに責任感を感じてしまっているのではと危惧してしまう。「そんなに早くもないよ。大体いつも7:30とか、そのくらい。…話し相手頼んだからって、俺に合わせるこたないんだよ?」と少しだけ申し訳なさげに眉を下げながら応えると夜の冷えた風に当たったせいか、ふるりと身を震わせると小さくくしゃみをして。)
(/いらっしゃらないようですからもう覗きに来るのも止めますね。素敵な時間をどうもありがとうございました、これからも主様のなりきりが充実することを心より願っております。
それでは、さようなら。)
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