*story*
中学二年生の夏、僕らのクラスに彼女がやって来た。
レインコートの妖精、傘のお化け、雨の中の女の子。
すぐに僕らは仲良くなって、彼女はあの子と付き合った。
大好きな彼女が幸せならそれで良かった、良かった、良かった、はず、なのに。
彼女が階段から落ちた。
雨の中の誕生日、水曜日の湿った空気の中。
溜まり場にしていた神社の石段から、足を滑らせて。
傷だらけになった彼女は、目を醒まさなくなった。
彼女は今日も目を醒まさない。
あれから僕らは大人になって、大学生になって。
あの子はあいつと付き合って。
僕だけが彼女を好きなままで。
そんなときに現れたんだ。
あの日のままの彼女。
レインコートの妖精、傘のお化け、雨の中の女の子。
僕の、大切な女の子。
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