匿名 2012-05-28 15:27:51 |
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――おやすみなさい。
彼の手によって作られたあたたかな暗闇が目元を覆う。
囁かれた柔らかな声は私を眠りへと誘う子守歌だ。
けれど私は眠りたくなんかない。
だって眠ると悪夢を見るから。
パパもママも友達も
皆みんないなくなる怖い夢。
黒くて赤い、最悪な夢。
けれど私の意志とは関係なく
今日も睡魔が襲ってくる。
彼といるといつもこうだ。
彼お手製の紅茶と
彼の温もりがあれば
どんなに抗っても私は眠りの泉へと落ちてしまう。
そうしてまた、悪夢を見るのだ。
今日もまた悪い夢だ。
積み重なる死体、死体、死体
皆みんな私の知ってる人だ。
知り合いだけではない。
たまたま落とし物を拾ってあげた人
立ち寄ったコンビニの店員だった人
電車で隣の席だった人
朝すれ違っただけの人
そんな覚えてるかどうか分からない人たちまで
積み重なっていく
黒い影が
赤い飛沫が。
たまらず悲鳴を上げると
ふわりと優しい温もりが私を抱きしめる。
――大丈夫だよ、君は俺が守るからね。
そう優しく囁く声で目を覚ますと
いつも彼が微笑んでいるのだ。
そして今日も安堵する。
私の一番大切な彼が無事であることに。
彼だけがいてくれるこの世界に。
ひどく、安堵するのだ。
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