匿名 2012-05-28 15:27:51 |
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降りしきる雪のなか
銀色の世界に咲き誇るように飛び散った赤は
椿の花だったのか
それとも
君の色だったのか。
白く霞んだ視界ではもう何もわからない。
ただ、君の温もりのなくなった腕の中は凍えるように寒かった。
体も、心も。すべてが。
耐えられず、冷たい雪に覆われた君を抱き上げる。
けれども温もりはもう帰ってはこなかった。
右手に握られた刃物が
まるで氷のようにひどく冷たい。
そこから滴る赤色だけが
この世界に彩りを灯す。
――どうしてこうなってしまったのだろうか。
ただ、ただ…愛していただけなのに。
君を抱えたまま、そっとその場に倒れ伏すと
赤く滲んだ雪が僕らの体を包んでくれた。
雪はまだ降りやまない。
こんこんとこんこんと
まるで全てを覆い隠すかのように。
まるで全てを消し去るかのように。
まるで全てを一つにするかのように。
――大丈夫
赤も君も僕も
やがてすべては白になる。
僕はもう寒くはなかった。
(/とある方宛てです、最近寒くなってきましたのでお気をつけて…)
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