フラジール ／ 〆

眺めて眼福し、鍋を味わって満福ですか？（野菜を大きめに、ざく切りにして刻みながら調子のいい彼へ話し掛けて。何となくだが彼と自分は似ている様な気がするも確信は無い為心の中に留めることに。そういうのもあってか心配になると「有坂さん、元気ですか？」勝手に口が動いてしまい。特に深い意味はないが質問すると大きめなボウルに野菜や鍋の具材を入れリビングへ。用意して貰った鍋へごま豆乳の鍋つゆを入れガスコンロ点火、沸騰したら火の通りにくい順に具材を入れて暫く煮込み。煮込み始めて大分野菜がしんなりとして味が染み渡ってきたと感じては話し掛け）
鍋のスープは私の好みでごま豆乳にしてしまったけど、平気だったかな。 それから明日は有坂さん仕事……だよね？

　
　
そうだね、色々満たされそう。 んー、何を持って元気って言うかによるかな。そういう美織ちゃんは元気なの？
（悪い気はしないと相手の言葉に乗っかって肯定示して。手際良く準備されて行く鍋を眺めながらも相手の問いに少し悩んでから元気の定義が分からずに曖昧な答えを返して。唐突な問いをかけた理由気になれば視線向けこちらからも問いかけ返しつつ2人分のグラスに麦茶注いだり取り皿も並べたりして食卓の準備して）
基本的に何でも食べられるから大丈夫。 午後からね。……なんか用事でもあった？
　
　

有坂さんの心は元気？私は最近調子良いよ、心。前に比べたら…落ち着いている。
（鍋へ視線向け前に比べれば大分元気になった方なので心は元気がどうかと改めて質問し。特に用事は無かったのだが彼と話していると自然と気を遣わずにいる事もあり不思議な理由のわからぬ感覚に心臓辺りぎゅっと軽く触れて意味を考え）
特に用事はないけど、最近よくお邪魔していたりとそれが当たり前になってきているから、迷惑でないかなって。私がお邪魔していたら部屋に彼女連れてこられないでしょう？

　
　
分からない…ってのが正直なとこかもね。でも美織ちゃんとこうやって一緒に過ごすのは楽しいというか楽な気がする。
（グツグツといい音を立てる鍋の前、調子が良いのか悪いのかよく分からない心境口にして。だが相手と過ごすこの時間はちゃんと呼吸が出来るような心地良さを感じていて一回り年下の彼女見つめながら語り。相手の話聞けば軽く笑い飛ばして心配は杞憂だと理由付け足して）
そんなこと好きにしてたんだ。大丈夫大丈夫、俺彼女とか作るつもりないから。
　
　

…楽でいてくれていたんだ…そっか。えっと、有坂さんきょうだいはいる？
（とんすいへ煮込まれた野菜、鶏つくね等の肉類やきのこ類を適量盛りつつ会話は続けられ。きょうだいの事について質問しつつお皿を手渡して。今度は自身が食べる分をとんすいへ盛りつつ彼女をつくらないということはいらないという意味で。彼の見た目と表面上の性格は違うのだと考えつつ盛り付ける手を止めると皿をテーブルへ置き、じっと見遣り）
彼女……恋、か。どんな感じなんだろう……っと、野菜がしなしなになっちゃうからそろそろ食べようか。──いただきます。

　
　
ありがと。 妹が1人いるよ。美織ちゃんより少しだけ上だけど。
（器を受け取れば素直に礼をしながらも質問に答えて。相手を心地好く思うのは妹を重ねているのかそれとも別の感情故なのか分からないでいて。いただきますと手を合わせれば久しぶりに人と食べる温かな食事をしている気がして心無しかご機嫌そうに食事開始して。ふと相手の発言引っかかれば視線向けながら感想零して）
恋、した事ないの？ 美織ちゃん可愛いからモテそうなのに。
　
　

有坂さんって本物のお兄ちゃんだったんだ。お兄ちゃんがいたらこんな感じなのかな？
（野菜を咀嚼しながら彼女にはきょうだいがいないので妹がいるという情報を知ると、彼は本物の兄なんだと自然に納得し。母親と二人での食事も安心するが、彼との食事も家族と同等に近い感じで心の何処で安心している自分がいて。“恋”というキーワードは彼女には無縁で理解し難く、そもそも異性がトラウマレベルなのもあり無意識に遠ざけ今後も恋は知らないと告げてしまい）
初恋もまだで、恋するという事自体わからない。クラスの男子とか私に対するイメージを勝手に作り上げてくるし、男性が怖いから……きっとこれからも恋なんて知らないままでいるかも。

　
　
どうかな、あまり兄らしいことはしてあげられなかったけど。…俺の妹になってみる？ …なんて。
（鶏つくね咀嚼しながらもあまり身内話をしないタイプのはずがスラスラと話をしていることに自分ながら驚いていて。何処か兄妹という関係に興味を示す相手に冗談めいた口調で提案してみて。相手の話聞きながらも軽く相槌を打ち。形だけは色々とやってはみたがよく聞く幸せな気持ちやドキドキよりも面倒の方が強く苦笑い零して。ふとその男性に当てはまる自分はどうなのかと何となく問いかけ）
…成程ね。まあ必ずしないといけないものでもないし、面倒臭いよ色々と。 あ、なら俺も案外怖がられたりする？
　
　

擬似兄妹の体験……してみたいかも。有坂さんがお兄ちゃんだったらいいな、ってちょっと思ってるから。
（冗談だと理解していても疑似体験をしてみたいのかチラリと視線送るが冗談と通されてしまいそうで直ぐ鍋の方へ、視線下がり。器の中身が無くなってしまうとおかわりとして盛り付け、異性である彼に対しては不思議と恐怖は感じられず首を左右に振って否定し）
恋愛って面倒なんだ……勉強になる。不思議と有坂さんは怖くないんだよね。こうやって話していると安心するし。

　
　
そんな事思ってくれてたんだ。 いいよ、やっても。 でもそしたら“有坂さん”は禁止だけどね
（予想に反して乗ってきた相手に意外と視線向けるも悪い気はせずに軽いノリで承諾して。出汁多めにお代わり盛り付け食事進めながらも呼び方に触れて。相手に合わせて口が止まることなく会話しながらも怖くないと聞けば何処か嬉しそうに笑い、男性嫌いの克服になればと感想零して）
　
　

そう、だよね。兄妹なのに苗字で呼んでいたら可笑しいし……今日から二人きりの時は隼人お兄ちゃんかお兄ちゃんって呼んだら良いかな？
（呼び方について聞くと真ん丸な目が一瞬だけ見開くも直ぐに納得し。鍋の中身が無くなったのを確認後、〆へと移行すべく持ってきた饂飩を取りにキッチンへ。二人分の饂飩を鍋へ投入し、菜箸で解しながら擬似でも兄ができた事により感じた事のないこの不思議な感覚を解明しようと必死に考えるも納得いく回答を導き出せず悩んでしまい。気持ちを切り替えるために話題を変え）
…そうだ。隼人お兄ちゃんの仕事って確かショップ店員だったよね？ アルバイト募集していないかな。もう高校三年生だし、毎日私の学費を稼ぐ為に夜遅くまで働くお母さんを少しでも助けたくてアルバイトしようと考えているの。

　
　
俺が呼ばせてると思うと犯罪臭がするような気もするけど…まあいっか。 二人だけの秘密ね。
（テキパキと〆に移行する様子眺めながらもお兄ちゃんという明らかに危ない響きに一般常識と照らし合わせて呟き零すも面倒臭くなれば考え放棄して許諾し。社会的地位の為にも人差し指口に当て他の人には内緒だと語り。相手の話聞けば朧気に募集していたような気もするが確証もなく、明日にでも聞いてみると告げて。自らアルバイトをする姿勢に褒め言葉吐いて）
多分募集はしてたと思うけど、店長に聞いてみよっか。それにしても偉いね、アルバイトしようと考えるとか
　
　

秘密と言われるともっと危ない感じがする。私より上ってことは隼人さん妹は社会人なのかな。
（オブラートに包んだり空気を読めず思った事を何でも言ってしまう為、今回も表情変えずにぽつり呟き。妹がいることを先程知って思い出したのか呟くように疑問を言葉にして。アルバイトの募集について掛け合ってくれる事には素直に御礼を伝えられたが、アルバイトに関して家庭環境が強く影響しているのもあってか褒め言葉には素直に頷けず、俯き加減で事情説明し）
すみません、隼人さんありがとう。……そして私は偉くない。中学生の時に両親が離婚し、母に引き取られて。その日からずっと母は私の為に夜遅くまで働く毎日、少しでも負担かけまいとアルバイトしようと思って。だから私は偉くないの。隼人さんみたいに愛想よくないからどうしよう……私に接客できるかな。

　
　
……確かに。でも他に言いようが無いから困るな。 …多分？ 家飛び出して来たから、今何してるか分からないんだよね。案外交通事故とかに合って死んでたりして
（相手の正論的なツッコミに思わず納得してしまうも二人の関係を表すにはそれしか浮かばずに煮立ったうどんつついて器に入れ。問いには曖昧な回答にして、身内話をしてるとは思えない程軽い口振りで冗談飛ばしたりして。話聞きながらも子供の為に頑張る親と親への感謝や申し訳なさという所がピンと来ずに理解出来ないままでそれとなく在り来りな事告げるに留め。心配する様子に大丈夫と告げつつも心ならと一つの案を出して）
　
　

　
なるほど…？ 美織ちゃんのお母さんは優しいし、美織ちゃんも優しいんだね。 最低限の礼儀さえあれば何とかなると思うよ、それか俺がいる時間に一緒にシフト入る？
　

（改めて話を聞くと彼は家族の話をするのは嫌なのかとぼんやり考えて。確かに自身も過去に最悪な記憶があり、家族の話をするのは抵抗がある為これ以上家族の質問してはダメだと言い聞かせ。母親意外に優しくされたのは彼が初めてなのもあり、知り合ったばかりでどうしてここ迄優しくしてくれるのか悩みつつも有難うと御礼の言葉を告げており。饂飩を器へ移動させつつ、もしも採用されたらと採用後について考えると言いたい事全て告げてからうどん啜って食べ始め。）
もしも私が採用されて隼人さんと同じシフトにしてもらえたら有難いけど、私は新入りだしそこまで考慮してもらえるかな。採用されたら勿論、隼人さんの為にも頑張って必死に働くつもりだけど。

　
　
そこの辺はテキトーに言っておけばいいんだよ。「親戚の子がバイトしたいって言ってるんですけどそこの親御さんが結構過保護で出来るだけ目の届く範囲で働かせたいって感じで。俺が責任持って見ておくので出来るだけ一緒のシフトに出来ませんか」的な。 俺の為ってどこから来たの、それ。
（大丈夫大丈夫と軽い調子で言いつつもスラスラとそれっぽい言い訳と店長に向けて喋る内容を例としてあげてみて。久しぶりの温かな食事は精神的にも良い影響を与えるようで何時もよりも精神が落ち着いているような気もして。食事進める彼女の事を見ながらも“隼人さんの為”が文脈の中から突然現れたように思えて心底不思議そうに首を傾げて）
　
　

…なるほど。私、頭が固いから納得のいく理由が思いつかなかったな。同じシフトになったら隼人さんに迷惑かけないよう、隼人さんの為にもと思ったらアルバイト頑張れそうな気がして。モチベーションは大切だよね。
（饂飩を飲み込んでから淡々と質問に答えていき、一通り話すと再び〆の饂飩を啜って満腹になったのか箸を器の上に置いて真っ直ぐに彼を見詰め）
今まで家族以外で食事する人いなかったから、こうやって話しながらゆっくり食事できたのは久しぶりかも。その相手が隼人さんで良かった……優しいし。

　
　
ああ、そういう事。 まあそれで美織ちゃんが頑張れるなら良いじゃない。…あ、男のお客さんとか大丈夫なの？
（納得した様に相槌打てば特に深い意味が込められている訳では無いことに酷く安心して、ふと浮かんだ質問尋ねて。自らも食事終えるとご馳走様でしたと手を合わせて箸を置き。いつでも来ていいよと言葉続けそうになった自分に気付き、他人との交流を望むような欲を否定する様に首振って誤魔化し。へらりと笑って言葉返して。自分に向けられる“優しい”と言う言葉は違和感しかなく、アドバイスをするような口調で言葉並べて）
俺で良ければ……、いや何も無い。まあそれなら良かった。…美織ちゃんって詐欺とか引っ掛かりそうだから気を付けてね。俺の優しさは打算的だから。
　
　

その問題については多分、大丈夫かな。仕事と割り切れば頑張れそうな気がする。
（今後社会人になったら異性が苦手等言っている場合では無い為、今から少しでも慣れておこうと彼に心配かけまいと苦手でも頑張ろうとして。これからもずっとひとりでいる事を慣れる為にも誰かと食事するという安心感を覚えてはダメだと一線引く考えに至り。打算的なのは一般的だと悪い印象が強いが彼女からしたらそうでは無いのか首傾げ）
隼人さんってやっぱりお兄ちゃんだね。意外に世話焼きだったりして？……詐欺には確かに気を付ける。誰でも自分が大切だから自分が得する様に行動したり考えるのは当たり前だよね。打算的な優しさであっても、ありがとうって私は言うよ。今日は隼人さんに色々話しちゃったな。離婚の事は誰にも話した事がないからくれぐれも秘密でお願い。…二人の秘密がまた増えたね。