一見さん 2023-12-23 17:33:22 |
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〈倉木真澄〉
「そう…なら良いんだけど。」
(彼の返答を聞き、折角セットした髪を崩さないように気を遣いながら─優しく彼の頭を撫でてやる。仕事の邪魔はしたくないからね、と続け、二人を抱き締めながら天井を見上げた。─昔から好かれる人種と何も変わらない筈なのに、彼らと居ると玲と居る時のように心穏やかで─それどころか、幸せですらある。自身とは無縁だと思っていた"平凡な幸せ"というのは、これなのかもしれない─とそんなことをぼんやり考えつつ、彼らの左手薬指に輝く指輪に目を落とした。「…はは、参ったな…君達が可愛すぎて、何でも許してしまいそうだよ。」と彼らに言い聞かせるように呟けば、五条は一層機嫌を良くして擦り寄ってくる。じっ、と空色の瞳で見上げてきた後─「僕も。…殺されてもいいくらいには─真澄のこと、ホントに大好きだよ。」五条は冗談めかしてはいるものの、何処か真実味を帯びた声色で微笑んでみせた。素直に感情を口に出したご褒美、と言う訳では無いが─片手でその顎を掴み、甘やかすように唇を重ねてやる。唇の隙間から従順に差し出される舌と自身の舌を絡め、時折歯で軽く噛み付いたりしてやれば─五条の表情はあっという間に蕩け、唇を離すと続きを強請るように手を伸ばしてきた。─先程から─新着メールの通知が、携帯から延々と鳴り響いている。十中八九、老害共からのお怒りのメールが届いているのだろうが─老害共からの気が滅入る様なメールを見るよりも、目前の愛しい妻達と過ごす時間の方が大切に決まっている。しつこく振動する携帯の電源を片手で落とし、すっかり放置してしまった彼を手招くように─指先を軽く動かした。おいで、と口の動きだけで告げ、見せ付けるように自身の唇を舐める。)
──
〈五条悟〉
「…ホントに大丈夫かよ…」
(五条は先程とは打って変わり、彼女の手を軽く擦りながら心配そうな声を上げる。「…帰ったら硝子に見てもらえよな。」と声を掛けたところで上映時間が近付いてきたらしく、出来るだけ力を込めないように彼女の手を握りながら─スクリーンへと向かった。)
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