一見さん 2023-12-23 17:33:22 |
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〈倉木真澄〉
「……はは、君達は本当に─可愛いね。」
(彼らからそれぞれ唇を落とされ、思わず口元が─玲にだけ見せる時のように、柔らかく緩む。両腕に縋り付かれたままではあったが、手を持ち上げて頭を優しく撫でてやりながら─店員の帰りを待った。倉木が口にしたものはどれも希少な宝石であるからか、帰って来た店員によって奥の応接室へと通され─小さなケースに入った三つの指輪がテーブルに置かれる。どの指輪も中心に宝石が埋め込まれている、ごくシンプルなデザインだったが、リング部分の貴金属はシルバーではなく─照明に照らされて眩い光を放つプラチナだった。倉木は数百万円をゆうに超える合計金額を聞かされても動揺一つ見せず、財布から取り出したブラックカードを切る。これは─監視にあたっての必要経費を此処から出せ、と言われ、上層部の老害共から渡されていたカードだ。この請求が来た時の─老害共の慌てる姿が目に浮かぶようで、思わず微かな笑みが漏れる。店員から指輪の入ったケースを受け取り、応接室を出た後にタンザナイト以外の二つを取り出して─二人の左手を取った。流れるような所作で薬指へその指輪を嵌め、指先へと唇を落として「…愛してるよ。」と小さく呟くように─唇から言葉を零す。)
──
〈五条悟〉
「…あ?…ホントだ、居ねえな。」
(大人しく席に腰を下ろした五条は彼女の言葉に反応し、周囲を見回す。確かに家入達の姿は無く、いつの間にか二人きりになっていた。自覚した瞬間、妙に落ち着かないのかそわそわとし始める。)
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