一見さん 2023-12-23 17:33:22 |
通報 |
〈倉木真澄〉
「……すみません、ここ…診てもらえますか。」
(五条に口の動きだけで待て、と指示すれば、五条は仕方無さそうに─倉木の肝心な箇所からぱ、と手を離した。瞳だけを細めて頷いた後患者服を捲り上げては、脇腹に残る古傷の一つ─小さな弾痕を部屋の照明の下へと曝け出す。随分昔に負ったその傷は、今しがたまで痛み一つ訴えてこなかったのだが─スイッチを切り替えた瞬間、微かに疼くような鈍痛が走り始めた箇所だった。彼の大きな手を取り、傷の場所を覆い隠すように手を乗せては─「少し動く度に痛くて。一応薬は飲んだんですが…痛みが引かないんです。だから─」"診察"してくれませんか、と─我ながら、病床の患者らしからぬ艶かしさを纏った甘い笑みで彼にそう問い掛ける。五条は五条で─自身の額やら耳やら、様々な箇所へ"診察"と称した愛撫を繰り返していた。妙に拙い手管であるからか、その動きは快感よりも擽ったさが先行して─うっかり気を抜くと"患者"であることも忘れ、本能的にベッドの上で身を捩りたくなる。何とかその衝動を理性で抑え付け、彼の反応を伺うようにして─「ねえ、夏油さん…」と追撃で彼の耳元へと顔を寄せ、何処か蠱惑的な笑みと─酷く甘い声色のダブルパンチでそう囁いてやった。)
──
〈五条悟〉
「………」
(五条は彼女が謝罪すると、どこかばつの悪そうな表情を浮かべて─首を横に振った後、再び机に突っ伏してしまった。夏油の言葉も聞こえなかったフリをしているのか、机から顔を上げようともしない。)
トピック検索 |