歪んだ愛

いや……何でもない…
(このままだと本当に言い出してしまいそうで、どうしたらいいか分からず目を合わせないように顔を逸らして)
(また、携帯の着信音。とはいっても音が違っていて面倒そうにゆっくり取り出しては長い溜息を吐き出し、またか、と呟いて)

そっか、(言いたくない事はなるべく聞かないようにして)また、お父さん？(心配そうに声をかけて、随分と電話してくるんだなぁと思い)

いや…最近多いんだ。一度だけ操作を間違えて出たことがあるんだけど、それから毎日掛かってくる。
(着信拒否してもいいがそうすると後が面倒だから放置していると軽く肩をすくめ、鳴り続ける電話にうるさいと呟いてはソファのクッションの下に置くもののその際にどこか押したのか微かに声が聞こえてきて)

(ウッと短い悲鳴が入り。ねっとりした声で呼んでは、お話ししようよとぶつぶつ繰り返し)

それって、ストーカーみたいな感じ？(ますます心配になり、問い掛け)
そう言うのは無視してる方がいいと思う、けど、善斗君に危害が及ばないといいけど、、(警察に言っても事件になっていないので捜査はしてくれないだろうと思い)

多分な…まあ、電話だけで他は何もないから大丈夫だろ
(微かに聞こえてきた声に気持ち悪いと身震いして、お前なんかも話すことは何もないと携帯を持ち上げ通話終了のボタンを押そうとし)

(誰かといるのかい、と相変わらずねっとりした声が聞こえたと思えば画面越しにぬぅっと手が伸びてきて善斗の頬に触れて撫で回し)


(黒魔術的な何か←)

うわっ、な、なんだぁ(携帯から、いきなり手が現れて驚き、善斗を助けようと、携帯を取り上げその辺に投げ捨て)
なな、なんだよ。今の。気持ち悪ぃ

っ……ホント、そうだな…
(あまりに突然の出来事に頭が追いつかず触られるままだったが、取り上げて貰えば現実に戻ってきて。触られた場所を手の甲で思い切り擦りながら身震いして)

(また明日、とねっとり話してはクスクス笑って通話が切れると同時に手も消え)

善斗君、大丈夫だった？(触られたであろう手に触れて、心配するように顔を覗き込み)
大丈夫なわけないよね。あの、携帯変えた方がいいんじゃない？

……そ、だな。
(優しく扱ってくれる手に安心感を覚えて、触られた頬を上書きしたいのか奏の手の平を自分の頬に当てて貰うようにして)
早めに変える…
(その手に自分から頬ずりしつつ、変えるとなると色々面倒だなと内心苦い顔をし)

うん、そのほうがいいと思う(触られた箇所に手を持っていかれても嫌な顔１つしないで微笑み)
今日は、もう休もうか？

ん……あー、そうだな。風呂は朝シャンでいいか…
(ボタン一つで綺麗に洗ってお湯を入れてくれる便利な機能もあるが、今日はもうあまり離れたくないと思い頷いて。一人用にしてはやたら大きい、キングサイズのベッドをチラッと見てはもう一度手に擦り寄り)

(兼井がチラッと見た先を見ると、あっちが寝室で間違いないみたいだなと思い、兼井と手を繋ぎ)
じゃあ、行こうか。(寝室に行くとでかいベッドに驚き)
うわぁーすごーい！俺、こんなにでっかいベッド初めてみた！

無駄にデカいだけだよ。……今日は奏と寝るから、少しは狭くなりそうだな
(繋いだ手をしっかり握り返して一緒に歩き、ベッドの大きさに驚く反応を楽しげに眺め、いつもは一人で寂しいけど二人なら楽しくなりそうと内心思いつつくすっと笑って)

いやぁ、1人増えたからって狭くなるとは思えないけど、、(感覚の違いかなぁと思いベッドに腰掛け)
うわっ！すごいふかふか、こんなベッドで毎日寝れるなんていいなぁ～

まあ、物だけはいいからな…
(隣に腰掛けそのまま後ろに倒れ)
……特に気にして来なかったけど、そんなにふかふかなのか？
(小中高と修学旅行に行かせて貰えなかった為に、他の素材を良く知らず軽く首を傾げ)

え、俺はふかふかだと思うよ。(自分もねっ転がり善斗と至近距離で見つめ、赤くなり)
カッコイイ、、

……ん？そりゃ、顔だけはいいからな
(至近距離で見つめ合ってその言葉か、とよく聞いてきた為にふっと笑ってはもう少し顔を近づけ、鼻先同士触れ合わせ)

か、顔だけじゃないよ。性格も良いよ！(鼻先が触れると更にドキドキしてきて、赤くなり)
誰がなんと言おうと、善斗君は良い人だよ

……そっか。ありがとな？
(ひたすらに真っ直ぐな言葉にこちらも少し赤くなって、誤魔化す為に触れるだけのキスを贈り)
今日だけは、大切にするよ…
(整った顔をくしゃっと歪めては何ともいえない表情をし、腕を伸ばして頭を撫でて)

う、うん。ありがとう(触れるだけのキスで、こんなに幸せな気持ちになれるんだなぁと思い、恥ずかしくて顔を少し逸らし)
今日だけかぁー　儚い恋だったなぁ～(仰向けになって天井を眺め)