歪んだ愛

なんでも？……馬鹿、やめとけ。
(だったらこのまま全てを奪ってやろうかと動こうとするも、初回からやらかしては後々面倒なことになるかと思い直し肩に乗せていた腕を離して立ち上がり、その代わりにダンっと思い切り床を踏みつけ)

ほ、ほんとだよ。(なにか不味い事でも言ってしまったのかと思い、謝ろうとするも、彼の様子がおかしいのが気になり心配そうに声をかけ)
善斗君、大丈夫？どうしたの？

…悪い、やっぱ今日は帰ってくれ。
(繰り返し思い切り床を踏みつけ一旦は落ち着いたのかゆっくり深呼吸して、背中を向けたまま扉の方を指差して帰るように言い)

え、でも、善斗君を1人にしておけないよ。(なんだか情緒不安定な彼を放っておく事ができず、帰らないと首を横に振り)
1人で抱え込まないでさ、何かあるなら言ってよ。

いいから帰れ…！
(相変わらず背中を向けたまま、床に落ちていたクッションを掴み壁に向けて思い切り投げつけてもう一度深呼吸を繰り返し)

嫌だ！帰らない。こんな悲しそうな善斗君見て、帰れるわけないよ。(それでも引き下がらずに帰るのを拒み、彼の前に立つと抱き締めて)
俺、頼りないかもしれないけど、力になりたいんだ。

っ……はっ、お人好しも程々にしろよ
(抱き締められてビクッと肩を跳ねさせ固まり、少しの間腕の中でじっとするものの鼻で笑って胸板を押し離れさせようとして)

お人好しなんかじゃないよ。善斗君だからだよ。(絶対離れないと言わんばかりに、ギュッと抱きしめて必死にしがみ付き)
話してくれるまで離さないから！

………強引な奴だな。
(今まで出会って付き合った相手は全員、ほんの少しでも仮面を外せば離れていくかそれでも好きだと迫ってきたのが鬱陶しく暴力を振るって無理矢理気持ちを離させていたが、こいつには通用しそうにないなと苛立ちつつその力をぶつけることは止め、代わりに思い切り床をダンッと繰り返し踏みつけ)

噂は知ってるだろ？付き合ってる奴の入れ替わりが激しいって…あれはな、俺が暴力を振るってるからなんだよ
(話さないと本気でこのまま居座られそうと判断し、仕方ないと諦め素直に伝えてはこれで帰ってくれないだろうかと微かに期待して)

なら、どうして俺には暴力振るわないんだよ！本当はしたくてしてたわけじゃないんじゃないの？(こんなに感情的になっていたら、自分に矛先が向いてもおかしくないと思うも、話しくれただけで実際してない事から、自分をコントロールできないのではないかと思い)
俺の事が、鬱陶しかったら、暴力でもなんでもすればいいだろ？なんでしないんだよ！そんな脅しかけたって、俺は別れないからな

……さあ、どうだろうな。
(付き合ってきた相手の顔など覚えていないと鼻で笑っては、どうでもいい奴になら何とも思わず振るってきたんじゃないかと遠い目をして)
本当に強引な奴だな…別れないのは勝手だけど、いつ来るか分からない暴力に怯えながら生きる羽目になるぞ？

別に怖くないよ。俺みたいな面倒くさいやつと付き合った事、後悔させてやる。(楽しそうに笑って言えば、暴力には屈しないと宣言して、彼の頬に手を伸ばして触れ)
1人にしないよ。だから、そんな顔しないで？好きな人には笑っててほしいな

………あ、…誰が笑うかよ
(頬に触れる優しい手に声が漏れて、同時に無意識に涙を流し。自嘲するように鼻で笑って頭を横に振り、その優しい手は自分には要らないと突き離すように冷たく言い放ち)

じゃあ、頑張って笑わせてみせるよ。(ニコッと微笑むとポケットに入っていたハンカチを取り出して涙を拭き)
少しは落ち着いた？善斗君って完璧だと思ってたけど、そんな事なかったんだね。なんか安心した。俺の前では素の自分でいてくれていいよ。全部受け止めるから

……分かった。
そりゃ、外面は完璧でないと困るだろ？誰が見ても欠陥なんて一つもない。そうでなきゃ付け入る隙が生まれてあらぬ疑いを掛けられる。昔やらかしてからはどれだけ拘束されたか…
(素でいてくれていいと、認めてくれたことを嬉しく思いつつ上手く表現出来ず分かったとだけ伝えて。幼い頃にあったある事件を思い出したのか苦い顔をして)

そんなこと、ないよ。完璧な人間なんていないんだよ？だから、人は寄り添って生きて行くんだよ。(彼から離れると額を触り、顔を覗きこんでは微笑み)
そっか、辛い思いをしたんだね。善斗君は人一倍寂しがり屋で繊細なんだね。

その寄り添う相手を放ったらかしてまで仕事してた父は、完璧な人だ。だから俺もそうでいないと。
(愛情なんて必要ない、と淡々と語りながら頬に触れた手を離そうと強い力で手首を掴み)
はぁ？人を傷付けても平気な顔して生きてるんだ、繊細なんて有り得ねぇよ

イタッ(て首を掴まれ苦痛に顔を歪ませるが、話す事はやめず)
善斗君のお父さんの事は、俺には分からない。でも、善斗君はお父さんとは違う人だよ。完璧になんてならなくてもいいんだよ。
それに、本当に平気な人は泣いたりしないよ？(掴まれていないほうの手で、再び頬に触れて笑顔を見せ)

っ……うるさい！
優しい愛なんて要らない…！もう二度と誰も巻き込みたくないんだ！！
(手首を掴んでハッキリ拒絶しているのに、もう片方の手でまた優しく頬に触れて微笑む姿にビクッと大きく肩を震わせまた無意識で涙を流して固まり。少ししてパンっと音を立てながら自分ももう片方の手を使いその優しい手を払いのけ、掴んでいた手首を離して叫ぶように言いながら、思い切り肩を押し)

だ、大丈夫だよ。俺も善斗君の苦しみ一緒に分かち合いたいんだ。だって、俺たち、恋人でしょ？俺には助けてほしいって叫んでるように聞こえるよ。(怒られようと肩を掴まれようと怯む事なく、自分の気持ちを伝えて、肩に乗せられた手に触れて顔をよく見て微笑み)
今まで、苦しかったんだね。やっぱり善斗君は優しい人だよ。