鬼の哭く夜（〆)

やった、じゃあ今度行こうよ。約束しよう、クッキーどう？
（食べ終えた相手に無邪気に笑みを見せると、一緒に行く約束をしようとしながらクッキーの感想を尋ねて）

……美味でした。恐れ入ります。
(瞳を少し伏せ、軽く頭を下げると今度はゆっくりと紅茶のカップに手を伸ばすが持ち方がわからないのか、湯呑のような持ち方で啜り始め)

どういたしまして、ここを持つんだよ
（思わず声に出して笑ってしまい、相手に自分の持ち方を見せてから正しい持ち方をやってみせると、もう一度してみてと言いたげに首を傾げて）

…申し訳ありません。
（ルカの持ち方を見ると気付いたように一度カップを下ろし、正しい持ち方に変えると紅茶を飲み、飲み終わったカップを机に置いて）

謝らなくて大丈夫だよ、ところで澪って休みの日は何するの？
（飲み終わったカップを台所に置いてからまだ時間があるかはわからないがまた話したいなと思って椅子に再び座ると少し気になって笑顔で尋ねてみて）

…休日は…剣の鍛錬をしております。怠る訳には参りませんので。
（静かな声で、生真面目な浅木らしい返答をすると時計を見て置いてあった軍刀を拾い上げ、腰に戻し）

おや、そうなんですか、真面目ですね。次はどこに行くんです？
（真面目だなと思い、軍刀を腰へ戻した相手に懐いたのか自身も腰に軍刀を戻すとついて行こうとして）

…これから軍法会議がありますので。末席ではありますが、参加しないとなりません。
（時計を見るとルカを振り返り、「…いくら賓客殿とはいえ、会議の見学は……上官に確認を取って参ります。少々お待ちを」と頭を下げて部屋を出ていき）

ありがとう、でも会議は難しいだろうし断られたらまた時間が空いたらわたしの相手をしてくれたらいいし
（部屋を出ていった相手に無理は言わないとだけ言えば自室に入り、中に飾られた絵を眺めたり、日本語はまだマシでは在るものの不完全なため本で勉強を始め）

…そうですか。分かりました。
（許可を取りに向かった上官たちも「流石に賓客殿とはいえ、会議はなあ…」と微妙な空気になったのを見た浅木は引き下がり、そのまま会議に出ていたがしばらくして会議が終わるとルカのいる賓客用の部屋へと戻り）

日本語って話すのも書くのも難しい…澪ってひらがなも難しい…
（しばらくしても来なかった相手にまぁ無理だったのだろうと納得して紙にペンでひらがなを書いており、本人はきれいに書いたつもりだが子供よりも歪な形で自身の名前のひらがなと、相手の名前を満足げに書いており）

……ただいま戻りました…何をなさっているのです？
(会議から戻ってくると平仮名を書いているルカに首を傾げ、紙を見ると納得の行ったように頷いて筆を執るとルカの書いた平仮名の横に達筆な平仮名と漢字で自分の名を書き加え)

これであさぎみおって読むのか……とても綺麗だね、澪にすごくあってる
（相手の持つペンも初めて見るためじっと見ていたが、書かれたひらがなは美しく、漢字はどうすればこう読めるのか分からないが字の形も綺麗だと感じてそのまま言葉にするとペンで試しに書いてみるものの上手く書けず首を傾げ）

…恐れ入ります。
(恐縮するように瞳を伏せ、軍帽を目深に被ると「…女人のような名だと蔑まれることが多かったもので。」と小声で呟いて)

女性のような？音の響きが愛らしいし、イタリア語では素敵な意味を持ってるよ。みおは。ちなみにわたしはイタリアの出身です
（相手の小声に目を瞬きし、綺麗な響きなのに女性のような名前だと言われるなんて日本語は難しいものだと思いながら、偶々そう言う名前だと言うことは知ってるが意味は教えずにいい意味だと言って微笑み）

……伊太利亜…そうだったのですか。
(小さく呟くとルカに視線を移し、「…同理で、お美しい顔立ちをしていらっしゃる訳だ」と軍帽を少し上げて薄く微笑み)

……中々、サラッと人が喜ぶことを言う日本人もいるんだね
（微笑んでそういった相手に２、３度瞬きをすると少し口元を手で隠し、言うのは慣れているがあまり言われ慣れておらず、ましては日本人はどちらかと言えば奥手だとも聞いていたので驚きもあり、少しするとすぐ手を下ろし「澪も綺麗な顔立ちだよ」と言って）

……世辞ではありませんよ。
(すぐに表情が戻り、息を一つ漏らすと「…上官が外を案内して差し上げろと。」端的に言って踵を返し)

外か、いいね…日本特有のものとかみてみたいな、あと…かんみ？甘いやつ
（外を案内すると言われると嬉しげに微笑み、相手の後ろをついていくと、そういえば馴染みの甘味処のことを思い出してそこにも行きたいと頼んで）

………畏まりました。
(小さく会釈をすると門扉を開き、文明開化の始まったばかりである街へと歩を勧め。煉瓦造りの建物が目立つ中、ひっそりと建っている和風建築の建物の扉を潜ると、着物を身に纏った上品そうな女性が姿を見せては「あら、浅木さん。お久しぶりやねえ。後ろの綺麗な外人さんは？」と浅木に笑顔で挨拶をしたあと、ルカを見つめて首を傾げ)