刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( 息も吐けない程の苦痛はいつの間にか緩やかに楽になっていたのだが其れが何故かは分からない。暗闇から徐々に過去の記憶が浮かび上がり、自分自身も深い水の底から少しずつ水面に向かって浮かび上がっているような感覚に、僅かに眉を顰め身じろぐ。______セシリアの後ろ姿が見えた。緩くカールした焦茶色の髪が風になびき、暗闇はやがて昔よく散歩した緑豊かな川沿いの煉瓦道へ。彼女の後ろ姿を眺めているうちに、景色はよく見知った幼稚園の教室の中へと変わっていて、心臓に冷たい刃を当てられたような感覚になる。歩いている彼女の後ろ姿を見ていた筈が、気付けば床に倒れて動かなくなった背中があり、思わず「セシリア、」と声を上げるのと同時に意識が浮上して。呼吸は乱れていたが、酷い苦痛をもたらさなかったのは口元に宛がわれた酸素マスクのお陰。しかし夢から醒めたばかりで、自分の置かれた状況を直ぐに理解する事が出来ずに。身体には酷く汗をかいていて、夢の恐怖から身体は小刻みに震えていた。 )
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