刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( 今日の仕事さえ片付けてしまえば、明日は静かに過ごせると思っていた。体調は思わしくなかったが耐えられる程度のもので、仕事に大きな支障は無い筈だった。棚にしまってある資料を取り出そうと席を立ち棚に手を掛けた時、突然酷い目眩に襲われて一切の平衡感覚が分からなくなる。自分が地面に足を付いて立っているのかすら分からなくなる程気持ちの悪い目眩。咄嗟に伸ばした手は何を掴む事も出来ず地面に半ば倒れ込むようにして蹲り。視界が回るような目眩で治まれば良かったものの、デスクの上にあったマグカップか何かが反動で落ちたのだろう。何かが割れる音がして、自分の意思に反して記憶の波が一気に押し寄せていた。追い込まれた状態で発作を起こしても、過去にさえ意識を奪われなければ耐える事が出来た。しかしあまりに鮮明な銃声____と誤認してしまった音_____が引き金となれば最早正常な状態ではいられない程に心は弱り切っていた。「っ、…ぐ、…かは、ッ……」あっという間に呼吸が上手く出来なくなり、瞳は暗く沈む。吐き気に襲われえずくのだが、何かを吐き出してしまう事も出来ずに苦しさに悶えるばかり。鮮やか過ぎる程の赤と血の気を失った妹の顔、恨みを湛えた遺族の暗い瞳と追いかけて来る記者の波。酸素を取り込む事が出来なくなった事で身体は痙攣を始め、棚に凭れ掛かるようにして身体は力を失う事となり。思いがけない来訪者が部屋の扉をノックした時、意識を失う一歩手前の状態で掠れた極浅い呼吸を繰り返し、身体は冷え切っていて。 )
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