刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( バレなければ良いという話では無いのだが、其れを相手に説いた所で無駄だろう。相手の口から“あと3日”という言葉が出れば心が軋むような感覚を覚えて視線を落とす。あと3日で事件から12年を迎える。あの日からそれ程の年月が経ったのかと思うも、いつだってあの日の記憶は直前に見た出来事かのように鮮明で、幾ら時が経っても決して色褪せる事は無い______むしろ生前に見ていた筈の妹の笑顔だけが、少しずつ霞んでいく。あの“赤”が目の奥に散らついた気がして、目元を覆って。何故ミラーが出張に出ている事を知っているのかという問いは今はしない、あの事件の日を1人で、この喧騒に包まれた状況の中で迎えるのは確かなのだ。果たして事件の当日、自分が署に出勤した時にはどれほどの記者が詰め掛けるのか。其れを思うだけでも胃を掴まれるような嫌な感覚になり「……もう、何も言わないでくれ_____」と、懇願するような色を含んだ声色で相手に告げて。 )
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