刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( 記者の前で少しでも動揺した素振りを見せれば、挑発に乗って感情を乱せば、それが不利に働く事くらい知っていた。だからこそ何を言われても冷静を保っているべきだったのに、其れはもう後の祭り。録音機が地面に落ちる音も、痛いという記者の声も、その前に荒げた自分の声も全て録音されており、“証拠として十分”という彼の言葉は正しかった。数日後に出た記事は直前までの記者の言葉を全て省かれ、取材を試みるも殺気だった様子で記者に暴行を加え録音機を破壊しようとした、と描写されるのみ。酷い悪夢に魘される日が続けば体に不調を来たすのも当然で、薬を飲み繋いでなんとか仕事をこなしているような状態だったがあくまで署では気丈な振る舞いを続けた。一方でそれが“心がない”と囁かれる事にも繋がったのだが。やがて記者が接触を諦める時間まで署に残るようになり、フロアから署員がいなくなると誰も残っていないと思わせる為に部屋の明かりを落とした。テーブルに付いた電気の灯りとパソコンのモニターの光の中、目元を覆うようにして深く溜め息を吐いて。 )
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