主 2021-09-27 07:57:31 |
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ここは文鶴(ふみつる)市の郊外。
緑が多く、空気も澄んでいる。
バスや電車のローカル線が通り、ショッピングモールも近く街に出ずとも生活には殆ど困らない。
少し遠くなるが幹線もあり都心へも出やすい。
しかし人はあまり寄り付かず、古くからここで暮らしているが子供や孫が進学や就職を機に家を出てしまい残された老夫婦や、病気を患った者がたまに療養に来るくらいのものだ。
それは何故かと言うと、こんな噂があるからだ。
「――文鶴山には怪異が棲んでいる」
この地は別名、文鶴(あやか)市と呼ばれている。
"文鶴"を読み間違えたのか、意図してそう呼んだのかは定かではないが、この土地を知る者たちは皆ここを妖の出る街"あやか市"と呼ぶのだ。
もちろんそんな噂を信じない者たちも居た。
だが山に肝試しに入った若者はたちまち青い顔をして街の外へ逃げ出していく。
そんな様子から、本当に怪異が存在するのではないかと調査が入ったこともあった。
何度も山に入り、様々な検証をされたが証拠どころか一切の手がかりも見つからない。
人々は次第に諦め、怪異のことも忘れていった。
それもそのはず。
山なんかに妖は居ないのだから。
本物の怪異である君たちは文鶴市の住民として人間たちに紛れ込んでいるのだ。
シェアハウスという形を取り、日本以外の怪異も受け入れて仲良く暮らしている。
時々人間も間違って入居するようだが。
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