奏歌 翔音 2020-06-11 11:08:38 ID:5762b1903 |
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>212 蘭花
【レーチェル/迷子センター】
まぶたを一度閉めて開く。二度まぶたを閉めて開くとまぶたは重く半開きとなった。
鏡の向こう側にいた少女が嬉しそうに微笑みかけている。
今思うとミラーハウスを出てから顔が引きつりっぱなしだったが、彼女が笑うとこんな顔をするのか…と、入れ替わりが起きてからそれまで自分がしたこともない表情を簡単に作りだす少女に「かわいい」とさえ思えてくる。
「……蘭花さんですね。覚えました。……舐めた血は、あまり美味しくはないでしょうから……ソレは吐き出してくださいね。」
元の体に戻れたことは喜ぶべきことではあったが、口に含んだあの血は蘭花の口の中に残ったままなのだろうと思い元気よく転げ回る蘭花にそのように告げた。
__確か、父親らしき人物が蘭花はお友達と来ていて逸れたとスタッフに言っていた。
もうじき迷子センターで放送を聴いた蘭花のお友達がここへ駆けつけるのだろう。
その時になって絶対父親らしき人物によって拘束された状態のままではお友達もビックリしてしまう。
蘭花のおかげで緊張が和らぎ心に余裕ができたことを実感をするレーチェルは彼女の笑顔がもう少し見たくなり、もう一踏ん張りしようとそう決意した。
今のレーチェルに扱える魔法は闇魔法のみ。不幸中の幸いともいうべきか、偶然にも光とは対照的な存在。
とはいえ、この捕縛魔法は他でもないホクシチのボスであるナナの魔法のものだ。
ナナとレーチェルは一度だけ合っていて面識があるため彼女の底知れぬ力があることを知っている。
簡単に壊そうなどとは思っていない。わずかな綻びさえできればそれでいい。後は蘭花が自ら呪縛を解くくらいの力はあるはずなのだから。
残り半分しかない魔力を蘭花を捕らえる鎖へと向けて集中しだす。
隙間という隙間から闇が滲み出てくると蘭花を拘束する光の鎖に蔦のようグルグルと巻きつき出した。光の鎖を闇の蔦がゆっくりと締め上げていくとピシピシと音を立てて始めた。亀裂はどんどん大きくなり最後にはパキッと大きな音鳴らして闇の蔦は蒸発する。
やはり、ホクシチのボスの力というだけあってそのパワーにぞっとする。そして残り全て力を注ぎ込んでもこの程度でしかない自分の非力さにもぞっとしていた。
意識が飛ばないうちに蘭花の方へとうつろな目を渡す。
「……蘭花さん。ご武運を。」
それだけ振り絞るようにして蘭花へ告げるとどうか父親を恨まないで欲しいという願いを秘めたままレーチェルの瞼は固く閉ざされた。
そして……すーすーと心地よさそうに軽い寝息が聞こえてくるのは案外早いものだったそう。
>214 東野 桜 (ターナ)
【ナナ(キース)】
「__待て!! その体の持ち主を知っている……。」
お辞儀をして立ち去ろうとする相手の目の前に立ちはだかる。
「その体の持ち主……ターナは吾輩の妻である。ナナの身体と入れ替わってしまったのだ。」
事情を説明する。
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