奏歌 翔音 2020-06-11 11:08:38 ID:5762b1903 |
通報 |
>182 >斑鳩刹那さん[篠原雪音さん]
「ん!?その口調と気配、君は斑鳩君か!!」
慌てて駆け寄り、ヒーローは惨状を目にする。瞬きの間に状況を把握できるのはやはり姉の影響だろうか。
「雪音くんの力加減が分からなかったんだな?大丈夫だ、俺が必ず助ける!斑鳩君、君もそんな顔をしないでくれ!……何とかしてみせる!」
雪音さん[斑鳩さん]の頭をポンと叩くと真っ直ぐな目で応える。とは言えど恵人は湊さんの事は一般人だと思っている。恵人の姿なら治癒魔法……基本的なものなら出来るだろう。『あまり好きではないが』。だが今は一刻を争う事態だ。かと言って容易に人は呼べない。あからさまに異常な状態の人間と子どもの姿になった彼女達。一般人を巻き込む訳にはいかないし、悪の組織に魔法が使えるだなんてバレても困る。とすれば彼女達に指示するしかない。
「俺が呼吸器官と出血を何とかする。外傷性の気胸を起こしているから、気管を整えた後この辺りに穴を開けて出血の横流しと呼吸経路を確保するからその時にその回復弾?とやらを撃ってくれ。荒業だが、それなら何とかできる。その後はまかせてくれ!今はちょっと違うが俺は何時でもヒーローだからな!」
そう言うと周りを見渡して植木とゴミ箱、手洗い場を確認すると尖った枝を折り、ゴミの中からビンとストローを探し出すとそれを荒く水で洗いすぐさま戻る。湊さんの体を少し漁ると何も無い事に気付いて「すまない、この人!」と言いながらコートを脱ぎ、白いスウェットを脱いでからコートを羽織る。
息ができるように首を整え気管を伸ばすと「いいか、行くぞ?」と言うやいなや、肺の辺りに枝を突き刺し、抜き去るとストローを入れ込んで瓶を置く。
ドラマなんかで見られる気胸の応急手当のひとつだ。そして出血の原因となっている部位……折れた骨などがあるであろう腹の横にもう一度刺すと血が1回吹き出し、上に上昇していた血液が横腹から流れ出す。それをすぐさま白いスウェットで縛り出血を抑えていく。
「頼むぞ!」
湊さん[恵人]の顔や手は血にまみれて、少し震えている。
当然だ。忘れているかもしれないが彼は高校生だ。医療従事者じゃない。今やっている事だって正しいかなんて分からないし、机上で学んだ事を行っているだけの不安定な状態だ。
それでも彼は、彼女達が犯罪者扱いになる可能性や悪の組織の人間や一般人にバレたりしないようにする為に、守る為にまだ人を呼ばないという選択肢をとっていた。
重い責任を自分が背負うことで彼女達に行動する理由を取らせた。それが彼女達が行ってしまったことへの罰にも、救済にもなることを信じて。
トピック検索 |