水無月 2020-04-29 18:43:53 |
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>文月
趣味の範疇でこれか。大したもんだな。
( 自分自身が自炊する気が更々なく、今に至るまで碌に料理をすることもないまま生活してきた為に、何気ない彼の発言に感心した風に思わず唸り。そうして会話をしている間に、プリンをすっかり食べ終えてしまい。食後に珈琲を一口嚥下すると、珈琲特有の風味が口に広がるのをじっくりと味わい。一般的にリラックス効果があるといわれている珈琲の香りと、脱力的な雰囲気を身に纏う彼の存在も相俟って、自分でも自覚しないまま幾許か気を緩めていて。「お前の作る飯も十分旨いんだけどな」と、まるで次いでのように、半ば独り言に近いような声音でそう告げ。)
>睦月さん
まあ、そうっすね。いつもの如く仕事ですよ。
( 見ていて気持ちがいいほどの飲みっぷりに触発され、それに倣うように、ぐいと喉を鳴らしながらビールを呷り。缶の中身を半分程消費したところで飲み口から口を離すと、昼間からアルコールを摂取する背徳感からか、深々と満悦の息を吐き出し。彼女から切り出された話題に、さりげなく視線を遠くへ投げると、拭い切れない徒労感を微かに滲ませて応じ。「睦月さんの方は、調子はどうすか?」と、彼女を横目で見遣り、こちらからも尋ねて。)
>如月
なんでって……強いて言うなら、直感だな。
( 彼女の言葉を受けて、ついと視線を宙に投げて一刻思案に耽る素振りを。実際に思うところは多々あったが、さほど間を置かずして口に出した答えは簡潔なもので。今回の仕事に限っては、写真家としての矜持以前に、余計な私的感情が胸の内を占めているのが厄介なところで。決して手を抜いた覚えはないが、特別な心境であるが故に普段の仕事振りがどうにも発揮できずにいる現状を思い返すと、胸中に苦い思いが広がり。視線を前方に据えて、どうしたものかと我知らず眉根を寄せながら黙考し。「……そうだ如月。これは折り入って相談なんだが、今日の予定は空いているか」と、ふと思い至ったように彼女の方へ視線を戻すと、出し抜けにそう切り出し。)
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