匿名さん 2019-10-12 22:26:20 |
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( 季節は秋。太陽が沈み始めようとしている頃、彼女は逸る気持ちでプラットホームに立っていた。それもそのはずこれから故郷である隣町のラクーンシティへと久しく戻るのだ。勉学に追われる日々の中でやっと纏まった時間を作る事ができ、父本人には内緒でサプライズとして帰る予定だ。__きっと驚いて腰を抜かすだろう。そう思うと自然と口元が緩んでしまう。胸元で両手を握り、心を落ち着かせようと深呼吸を数回。不気味すぎるぐらい物静かな辺りに列車の警笛が鳴り響くと、少しばかり肌寒さも感じられる風が吹き荒れて木々がざわめく。それはまるで自然が彼女らに警鐘を鳴らしているかのように。
静かに扉が開き、どうやらこの駅から乗車するのは自分一人だけらしい。列車内の人はまばらで物珍しさと少しの違和感を感じるも、それよりもクラシカルでレトロな装飾の数々に目を奪われてしまい、大して気には止めなかった。乗車口でウェイターから差し出されたウェルカムドリンクは、ラクーンでは一般的なハーブを使ったアイスティーだ。この香りを嗅ぐとノスタルジックな気分になり何故だか母の事を思い出させる。快くグラスを受け取ると同時に列車が動き出す。隣町と言ってもそれなりに距離はある、どうせならば景色の良い席でハーブティーを楽しみたい。と考え、揺れ動く列車内で窓外を気にしながら歩みを進めていく。
途端列車が強い揺れを起こしたのは奇しくも男性の乗客が乗っている座席の前で、体勢を崩した拍子にグラスに注がれていたハーブティーはその彼へと。一連の流れがスーパースローのように見えたのは最悪の事態を起こしてしまった故に頭が真っ白になってしまったからなのか。
「 ―ああ、どうしよう! ごめんなさい!」
乗客は指で数えられる程度にしか居ないにも関わらずピンポイントで彼目掛けて零してしまったのはなんとも不運な出来事。
やや上擦ったトーンで焦りの声を上げながらすっかり落ち着きを無くした様子で、バッグから零した量とは比例にならないちっぽけなハンカチを片手で取り出しつつ。 )
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( /お伝えし忘れていたのですが、時系列は原作と同じ時間軸である1998年の秋をイメージして回させ頂きました。まだ軌道修正できる範囲内ですので勿論変更して頂いて構いません…!!
原作とパラレルワールドにするか否かも相談出来ればと…… )
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