匿名さん 2018-08-03 00:08:59 |
通報 |
……すまないね。
(相手から一応の承諾を得られれば、潜めた声で労いを述べるも実のところ、意識のほとんどは既に集団へ向けられていて。樹木と草の陰に隠れれば、注意深く、映像と音を拾おうと試みる。途切れ途切れに聞こえてくる言葉から、宗教的な儀式の最中なのかと憶測を立てて……リーダーらしい人物も認識できることから、全くの無秩序な集団というわけではなさそうだ。集中していると、不意に隣から一片の紙切れを差し出され。少々驚いたが、腕を視線で辿ると、その先にあるのは些か不機嫌そうながら、勝手にもう相棒と認識しつつあった少年の顔であり。黙って受け取り、目を通す。そして、そこに掲載されている顔写真と視界の先にいる女の符合にも気が付いた。……もっと衝撃を受けても良かったのかもしれないが、沸き上がった感情は血の気を帯びた驚愕ではなく、静かで冷ややかな興奮であった。……やっぱり、関連性がある。突然、非現実を押し付けられれば、それは驚くさ。だけれど、一見、難解で不可思議な状況に遭遇し、その中でヒントと成り得そうな情報に巡り会えたなら、そこで一々きゃーきゃー騒いでいるようじゃ、刑事なんて勤まらないんだ。すっかり仕事モードに入ってしまい、真面目な面立ちになると、手にした紙片は畳んで自分のポケットに差し入れ。隣の相手に小声で「レニー、ありがとう。後でこの紙をどこで手に入れたのかも教えてくれ」と告げると、再び、集団の様子を伺うことに気持ちを戻そうとし。だが、そこで予期せぬことにリーダーらしき女を除いた全員が動物へと姿を変えてしまった。……これには再び驚いた。散っていく動物の背中を見送りながら、またもどう解釈したものか、悩んでしまう。……元々動物だったのか?それとも人間を動物に変えていたのか?そもそも、あの宗教はどういう教義だっただろう。教祖の本名や経歴は押さえられていなかっただろうか。何か思い出せることはないものか……。明らかにヒントなのに、活かせないのはあまりに惜しい。傍らの少年は立ち去りたそうにしているが、こちらはいよいよ、そうする気がなくなって。留まろうという意思を体現するかのように一切姿勢も変えず、女の方を見つめたまま口を開けば「……近接格闘には自信があるんだ」と呟き。続けて、少年の方を見ると、少し困ったように半端で控えめな笑みを浮かべて)
組み伏せようと思ったんだがなぁ……。あんなの見せられると戸惑ってしまうね。俺はあの姉ちゃんを捕まえて取り調べしたいんだけど、普通の格闘技が通用すると思うかい?
トピック検索 |