匿名さん 2018-08-03 00:08:59 |
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……分かったよ、しょうがないな。
(黙って振り返れば露骨に嫌な顔をする。出来るだけこの場に居たくない、早いうちに離れたいという気持ちが先行するものの、彼らは一応人間の言葉を使い喋る知性体なのだ。情報を得たい、という相手の気持ちも充分に理解できるが、やはり狂気とでもいうべきエネルギーが満ちたあの場所へは留まって居たくない。…少々考えれば、嫌な顔をしながら茂みの中に紛れて言葉だけに耳を傾けて。神、母、救い、断片的にしか言葉を耳にする事は出来ないが抽象的な言葉が入り込んでは抜けていく。隙間から様子を伺うと、辺りに散らばる肉片と鮮血を気にもとめず群衆は謎の仮面を被った女性のスピーチを聞き入ってあり。時々女性が声を荒げれば群衆は湧き立ち、拳を振り上げれば歓声が上がる。安いパフォーマンスだと気にもとめず、視界に入れないように努めれば一枚の紙が風に運ばれてきて。音を立てないように掴むと目を通す。暫し食い入るようにその内容を脳味噌に入れれば、相手に注意を払いながら渡し。君は驚くだろう。事件関係者にしか出回っていない、例の集団失踪事件の失踪者の情報が載った調査資料だったのだから。屋敷の主は失踪した一人である若い画家、子供は居らず妻は数年前に事故で死亡している。妻を失ってからはスランプに陥り、とある新興宗教に入れ込んでいた。そしてある日、屋敷に出入りしていた使用人と教団関係者と共に忽然と姿を消した。…女性が仮面を外す。資料に貼り付けられた顔写真と一致するその容姿は、ニコニコと愛想を振りまきながら皆に手を振っている。彼女は例の新興宗教の教祖、教団内では『ルーシー』と呼ばれていたらしい。彼女も失踪者の一人だ。すると、群衆は唐突に動物へと変貌する。赤い鼠、白い鴉、青く変色した狐、何れもが現実の動物達とは違う。クレヨンで塗りたくられたようにそれは現実的では無く不可思議な色合いだ。バラけていく動物達を見送るルーシー、見たところ彼女は動物へは変貌しないらしい。となると彼女が今のところ唯一の人間という事か。漸く押し寄せてくる嫌悪感に終止符が打たれた喜びを感じながら、今度は疲れが押し寄せてくる事に呆れたような溜息を吐く。もうアレに関わりたくない、と手を振るジェスチャーで伝えるも決定権はないだろう。その事を察しながらも、確認の意図を含めて小さな声で尋ね。 )
さて、どうするんだ?僕は絶対にあんなのとは関わりたくないが。言葉が通じるかも分からないだろう。
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