匿名さん 2018-08-03 00:08:59 |
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おや。
(相手の言葉が自分の問い掛けへの返答だと認識するまでに、一瞬の間を要した。何せ、さっきの問い掛けに深い意味はなかったのだ。言わば、挨拶。冷静な切り返しは期待していなかったし、倒れていた子供が目を覚ました直後と言えば、ひたすらぼーっとしているか、泣き出すか、そうでなければ露骨に怯えているものと相場が決まっている。しかし、そのどれでもなかった少年の態度に思わず、返す言葉を失い……代わりに口をついて出たのは、間の抜けた一言だけで。軽く思案に耽るように自分の首筋へ手を添え、まじまじと相手を眺めている内に雨は止み。奇妙なことが続いている、あらゆるものに警戒が必要そうだと理性は囁くのだが、無意識に動くものを追っていた瞳が、地面に描かれていくアートの完成を見届ければ、つい、作者の不器用さが伺える愛らしいその作風にクスリと笑みを零してしまい。改めて、相手に向き直れば緩やかな笑顔で「人間だよ。俺の名前はハロルド・マードック。某市警の刑事だ」と告げ。その場にしゃがみこみ、目線の高さを少年に合わせると、続けてにこやかに)
皆はハルとかハリーって呼んでいるから、君もそうしてくれて構わない。言うなれば、お巡りさんだからね。怪しい男じゃないってとこは信用してほしいな。……君、名前は?
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