匿名さん 2018-08-03 00:08:59 |
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……え?
(冷たい空気が頬を霞め、突如、視界が広がったように思えた。反射的に閉じた瞳をゆっくりと開けて確認してみれば、その先にあったのはこの世のものとは思えない不気味な光景で。海……だろうか。大量の水を湛え、太陽を抱く空の下で静かに波を打つその様は、海そのものだろう。なのに、猜疑を向けてしまったのは、何よりもその色の不気味さゆえに他ならない。瞳を丸くし、無意識のうちに口をついて出たのは、意味を持たない、ただ一語。だが、そこで自分の手が空いていることに気付くと、すぐにさっきまで触れていたはずの扉の位置を確かめようとして、それがもう何処にも見当たらなくなっていることを知り。暫くはキョロキョロと周囲を伺っていたが、やがて「え?え?……どうなってんだよ。これは一体どういうことだ…!?」と答えてくれる相手の宛てもない疑問を叫んで。パニックを起こしかけるが、職業柄、冷静を保つことの重要性は身に染みているはずで、咄嗟に片手を額に押し当て、深く息をついてみると少しだけ落ち着き。それでも頭の中には様々な疑問が巡っているが、先程の片手をぶらりと落とせば、自分の衣服には特に変化を生じているようには思えないことも分かり、腰の警棒の存在も思い出して、一抹の安堵を得る。……ここがどこだかは分からない、何がどうしてしまったのかも全く見当がつかない。だけれど、俺は怪我はしていないようだし、武器も持っている。目の前には海があり、後ろには森もある。どこもかしこも食欲をそそられる雰囲気にはなっていないが、森からは何か……うん、チャーミングな鳴き声も聞こえてくるし、死刑を宣告されて砂漠に放り出されたわけではないんだ。探せば、きっと食べ物だって見つかるだろう。……周囲の様子をじっくりと伺い、自分なりに分析して、強引なぐらいのプラス思考を展開すると、そこでふと、遠くの浜に奇怪な白い物体が打ち上げられているのに気付いて。片方の眉をしかめ「なんだ、あれ…」と呟けば、もしかすると、アザラシか何かかもしれないと閃き、それなら癒しにも食料にもなるだろうし、幸先が良いと意味不明な期待を膨らませ、逃げられたらまずいとその点を警戒しつつも、こっそりかつ足早に接近を試みて)
よしよし……、逃げるなよ……?
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