傷口の悦楽［　指名制／3L／吸血鬼　］

私は、っ
（私は、そんなつもりはなかった。全部、あなたのせいでしょう。背後から首へと伸びた冷たい指先に息を呑み思わず止まった呼吸のお陰で下手に反抗しないで済んだ。尻尾を振らせたのはあなたでしょう、演技でも尻尾を振って見せなければその場できっと心臓の動きすら止まっていただろうに？それでも、耳についたあの世という言葉にぞっとしたのは確かで肩を掴んだ手に逆らうこと無く身体は後ろへと傾く。首筋の痕を刻み込む様な行為、ズキリと再度傷んだそれに引き攣った呻き声が漏れる）
そんなに首輪つけなくたって逃げないよ。だって、イイコだもん
（心臓が破裂しそうだ。怖くて、痛くて、許せなくて。ハッと乾いた息を漏らしてから痕を首輪だと言ったのはただ単に人間の世界での痕は所有印だからで、他意はないつもり。それでも身体の奥がこれ以上痛い思いはしたくないと必死に逃げ道を探すことをやめない、口から出たイイコになんてなれるはずもないのに表面だけはきっと取り繕えているはずで…痺れた両手の指先で主人たる吸血鬼の片手を取り、肩を掴んでいた手に触れてそっとその甲に口付けをする様に血の気の失せた唇を寄せて…昔本で見たけれど、忠誠を誓うのなら形で示した方が良いだろうと）