主 2018-06-04 19:42:58 |
通報 |
…どうだかな。
(否定も肯定もせずに笑みで躱す。そうして威嚇してみたって、或いは抵抗したり逃げ道を探そうとしたり。そんなのは無駄だって決まりきっているのに抗おうとするのが彼女の良いところだ。最初から諦めて鬱になっていく人間を見るのも面白いし、徐々に力を失っていく憐れな弱い人間を見るのも十分楽しい。抵抗することに希望を見出している人間を容赦なく叩き潰すのは愉悦だ。だからない出口を、ありもしない逃げ道をチラつかせてやるのも仕事だと言える。そして落とされた人間は牙に身を委ねるのだから面白いことこの上ない。長く楽しめることだけが人間のいいところだ。)
俺が、人間が潜むやもしれないところで眠ると思うか?
お前と同じだ。吸血鬼のいる場所じゃあ面白いくらい油断も何もしない。
(これでも気配には敏感な方だ。部屋に誰かの気配が入れば目を覚ますし、そもそも吸血鬼の部屋に入るというのは自ら身を差し出すに等しい。何百年も生きていれば部屋に入られたことも何度かはあるわけで、その度に十分もてなして生きたまま返してやるだけ幸運だと思えばいいのに、人間はどうも自分の環境に感謝をしない。あろうことか血を吸うなんてとむせび泣くのを経験で知っている。…というか牙を折ったところでどうこうなる問題ならこの館は何年も続いていない。生活に必要な生命線はそこまでヤワじゃない。それを伝えて顔を歪ませてやるのも己の仕事に値するのだけど。)
…心が弱い人間はすぐ油断をする。お前が気にしている先ほどの人間もそうだ。
俺が上機嫌なくらいで吸血をしないわけがないのに、勝手に思い込んで傷付く。
(だから面倒だ。彼女の視線の先を追う様に捉え、そう言いたげにため息を吐いた。理解できない。理解できないから面倒。心が弱い。彼女はとうに自分へ視線を向けないけれど、しっかりと己の瞳は彼女を捉え「他の人間の心配をするお前もそうだ」と告げた。)
トピック検索 |