龍神様のお屋敷にて。/ 〆

……欲の薄いものよのう。
(あるいは、それ程に空腹だったか。どちらにせよ、する事は変わらない。本殿の中、その少し奥…既に食事が置かれている。
海から少し離れたここでは貴重な魚の料理、それに水の張った桶には桃が幾つか…ただ、一人分しかなく。)

さあ、遠慮なく食べなさい
(ソファのように大きな座椅子、そこに座り隣に座るよう手招きして)

あはは…
(浮かばなかったとはいえ、何か所望した方が逆に失礼じゃなかったかな、なんて今更そんな事を考えて。)
すごい…！
(相手へ続いて奥へ進んでいけば、目の前に広がるのは見たこともないような料理の数々。ぱあっ、と目を輝かせてそれらを眺めていれば、相手から隣へ座るように促され。再びせり上がってきた緊張をそのまま顔へ浮かべながらも、相手の隣へ静かに腰掛けて。)
…！あ、でも…
(さて、魚料理から食べようか。そう決めて箸を伸ばそうとしたところで、相手の分が無いということに気が付き、困ったような表情を浮かべつつ箸を引いて。)

これは全てお前のものだ。身体を清める一環と思って、食べなさい。
(何を言いたいかはよく分かる。困った表情も可愛らしく、くすくすと笑った。一方の腕は彼女の背中へ回して、もう一方は彼女の手から箸を取り、箸で刺身の一切れをつまみ上げて)

それとも、魚料理は嫌いか？
(彼女が魚料理を嫌っているとは思っていないが、意地悪に聞いてみる。まるで餌付けのように、刺身を彼女の口元へと)

そ、そんな事は…！
(誰が龍神様にこれほど密着されるなどと想像しただろうか。緊張もピークに達し、ドキドキと拍動が早さを増して。この音が実は相手に聞こえているのではないかと不安になりながらも、なんとか首を横に振って。)
…いただきます。
(横目に相手をちらりと見やっては、落ち着くためか小さく一息を吐いて。本能では早く口へ運びたかった刺身を相手の持つ箸からぱくり。)
美味しいです…！
(何年かぶりに食べた魚の味は、自らが想像していたレベルを遥かに上回っており、その感動からか自然と声も弾んで。早く二口目が食べたい。とはいえ、自分からねだるのも気が引けるし、箸を返してくれと要求するのも失礼に感じる。言葉では何とか出来そうもないこの状況を打開するためか、物欲しそうな目で相手を見やり。)

口に合って安心した。
焦らずとも良い、料理は逃げなどせん
(彼女の喜びがよく伝わる。期待する目はどこか小動物のようで、頰も緩むというもの。また一切れ取ってやると、彼女の口元へと運んで)

……だいぶ緊張も解れたようだな。もっと気を抜いても良いのだぞ？
(先程まで緊張でどこか硬かったのに、食事を始めれば幾分柔らかくなったように感じる。ずっと緊張しているのも疲れるだろうと、気を楽にと伝え)

(/そういえば…優衣ちゃんが来た理由って決めていましたっけ…？
龍神が決めたのか、しきたりでとか、立候補とか…)

ご、ごめんなさい！魚を食べるのなんて久々で…
(箸からまた一切れを口へと運んでは満足気な表情でそれを飲み込み、相手の指摘を受けては己の浅ましさに少し頰を染めて。)
そ、そうですか…？ありがとうございます。
(幼少期から話を聞いていた龍神と、これ程までに近い距離にいて緊張するなというのもなかなかに難しい話だが、相手の配慮はとても有り難い。少し頰を緩め背後の相手を見やっては、じっ、と相手を見つめ。)

(/そういえば決めていませんでしたね…。
どうしましょうか。私としては、立候補か選んでもらったかの２つだとうまくいくかなあ…なんて思います。
それと…つかぬ事をお聞きしますが、不器用な子ってどんな感じなんでしょうか…。
自分なりに色々調べたのですが、よく分からなくて…お手数お掛けします。

責めてはおらぬ。可愛らしくて、つい、な。
(謝ってきてしまった彼女、頭を撫でながら気にしていない事を伝えて。普段食べられない贅沢品を目の前にすれば舞い上がるのも仕方ない。)

これから共に過ごすのだからな…む？
(次の一口を取ろうとして、こちらを見つめているのに気づき。さてどうしたかと考え…悪戯心をくすぐられた。
きゅ、と抱き寄せるとその無防備な唇に口づけを落とし。まるで何事もなかったかのように、また笑った)
どうした？何か付いているか？

(/その二択、どちらも美味しいんですよね…！
個人的には、立候補する理由付けが難しそうだと思っていて…理由があるならそちらの方がいいですが、難しいなら龍神の使命ということで。
不器用…そうですね…何か龍神の手伝いをしようとするも、少し下手…そのため、龍神にしてもらっちゃう、みたいなのを期待していました。
桃を手で剥いて食べようとして、手をべたべたにしてしまうとか。単に段差でつまづいてこけるとか…言ってしまうと、ダメ巫女ちゃんだと嬉しいって事です！)

か、かわ…！？
(先程から何となくだが、えらく子供扱いされている気がする。確かに龍神様の寿命からしたら己など子供のようなものだろうが、何か納得いかない。むぅ、と頰を膨らませて反抗の意思を示そうとしたところで、相手からの予想外の口づけを受け、頰を真っ赤に染めて。)
…その…屋敷にお邪魔した時から緊張しっぱなしで、龍神様のお顔をじっくり見れてなかったな…と思って…
(直前に起きた出来事から、恥ずかしさやら何やらでまたもや相手を直視できず、視線を少し横にずらしつつもごもごと理由を説明して。本当に龍神様と共に生活できるのだろうか。特に悪い気はしないとはいえ、こんなにも驚かされてばかりでは、ろくに会話も出来たものではない。)

(/一応主様に言われた通り、動機というか、理由？的なものは考えておいたのですが、些か内容が暗いんですよね…。
今回主様が仰っている通り、使命、というのが一番簡潔かつ、内容が通るかもしれません。
なるほどなるほど！私、技術的な不器用ではなく、性格的な不器用を想像していて、勝手に難しく考えてしまっていました！元々まあまあおバカな娘にしようと思っていたので、非常に嬉しいです。
ご教授ありがとうございましたー。)

………ふふ。これから嫌でも見るようになろう。無理をせずとも良いぞ
(顔を赤くする反応も、初々しく悪戯心をくすぐられる。しかしこれ以上何かするのは来たばかりの彼女に可哀想、この程度にとどめた。
これから毎日、文字通り共に過ごす。今すぐどうこうしなければいけない事ではないと伝え)

ほれ、次。まだまだあるからな
(改めて刺身を彼女の口元へ。このままみんなこちらの手で食べさせるつもりで)

(/いえいえ！！
ご飯を食べ終わる辺りまで飛ばしますかね？)

ふう…もうお腹いっぱいです…
(どうにか机上の食べ物を全て食べ終え。珍しい食材があったのも相まってか、少し食べ過ぎてしまったようで、若干苦しそうにお腹をさすり。)
…あ！お片付けします！台所、どこですか？
(巫女として龍神様のお屋敷に足を踏み入れてからというもの、まだ仕事という仕事をしていないどころか、むしろお世話になりっぱなしでいる。思いついたように立ち上がっては、お皿を集めつつ相手に問いかけて。)

(/飛ばしちゃいましたー！)

うむ。満足したようで何よりだ
(よく食ったな、とくすくす笑う。結構あた料理が無くなっているのが、どれくらい食べたか感じさせて。さあ休もう、と彼女を抱き寄せようとした時)

お前が気にすることではないのだがな…そこを出て右だ。
……お前の身体はお前だけの物でないと忘れぬように。
(変わった娘だ、と思いながら台所の場所を教えた。出て右とは言うものの広いので結構距離があったり。
家事などは毎日していれば傷の一つでも作るもの、それをとても嫌っている。ただ、自らするという事をやめさせたりはせず)

それよりも、戻ったら碁の相手をせよ。腕が鈍ってしまうでな

はい！家事を終えたら是非！怪我には気を付けますー！
(相手の親切な道案内も特には耳に入れず、返事だけは元気に返して、半駆け足で部屋から出て行き。碁など最後にしたのはいつだっただろうか。上手くやれると良いのだが。そんな心配をしつつ廊下を真っ直ぐに歩いていけば、目の前には見覚えのない部屋や間が広がっており。まさか迷ったか、初めて足を踏み入れたとはいえ、家の中で迷うなどあるだろうか。適当に歩き過ぎたためか既に帰り道も忘れており、呆然とその場に立ち尽くし、「どうしよう…。」と呟いて。)

何をしている、まさか迷ったのか？
(帰りが遅いため様子を見に来てみれば、右往左往している彼女が。台所ならこっちだと戸を開けて。「しかし…そう複雑な形はしていないだろう。」
屋敷は外見よりも大きくなっており、慣れるまでは迷いやすいかもしれない…自分はあまりに長く住んでいるので配慮が足らず)

(/返信、遅れに遅れすみませんでした…)

えっ！？いや…迷ってなんて…。
(迷うほどの構造でもない等と言われれば、認めたくないのが人間の性。うつむき気味になりつつ否定しようと必死に良い理由を模索するも、特に言い訳は浮かばず。若干顔を上げて相手の機嫌を伺うようにちらり、と見やっては「…いました…。」と呟いて。)

(/全然大丈夫ですよ！
お気になさらず、ごゆっくりどうぞ〜)

ふ、気にするな。来て間もないのだからな。
(少し誤魔化そうとしたが、すぐに正直に言う…素直で良い子だと、慰めるように頭を撫でて顔を覗き込む。そのまま、手に持ったお皿を取ると「私にも手伝わせなさい。こちらだ。」と歩き出した。)

(/ありがとうございます！)

そんな！龍神様に手伝って頂くなんて…！
(もしや、自分がそこまで有能な人間ではないということを見透かされてしまっているのではないだろうか。くるりと背を向け台所へと歩き出す相手へ後ろからついて行けば、若干慌てたように上記。)

良い良い。私が好きでやろうとしているのだからな。
……しかし。ここに立つのは久方ぶりだな。
(自分はあまり台所に立たない、何がどこにあるかも把握していない程度。そこまで優衣と変わらない。
流しに皿を下げると、水がない事に気づき。外に井戸があるのに思考が行かず、少し悩んだあと)

…さて、私は何を手伝えば良い？
(と、分からなかった事を悟られないように誤魔化しながら優衣に投げて)

(/実はお手伝いさんがいる、という事にすると楽かも…と思ったんですけど、どうでしょう？)

そういうことなら…そうですね…。
(何となく納得がいかないような表情を浮かべるも相手がそう言うのならば、折角だし手伝って貰うことにしよう、と半ば無理矢理納得して。いざ手伝ってもらうとなると何をしてもらおうか、と考え込んで。)

まず、水を汲みに行きましょう！こっちですよー！
(少しの間周囲を見回しては、木製のたらいを２つほど見つけ、取り上げては、勝手口のドアを開き相手を招いて。)

(/その方が支障なく日常を送れそうですね…！
是非そうしましょう！)

ふむ…そうだな。
(彼女の提案に乗る……もう、緊張もほぐれた様子に頰が緩む。木のたらいを掴み、後を追う)

汲みあげるには重かろう？
(外に出れば、井戸はすぐそばに。本来は縄のついた桶で汲みあげるもの。しかし龍神が手をかざすと水の方が柱のように浮き上がって来、少し腕を伸ばすだけで汲むことができる。)
普段こんな事には使わんのだがな。

(/とりあえず、洗い物は2人でやっちゃいましょうか。この後、お風呂なんてどうかななんて)

えっ！ええっ！？
(確かに水を汲みあげるのにはかなりの力を要するし、洗い物となるとそこそこの量がいるので尚更だ。とはいえ、まさかこのような手法を取るとは考えてもみなかった。目の前に迫り上がる水に驚きを隠せずに。)
あ、ありがとうございます…！水、汲めました！
(まだ起きている状況を飲み込めてはいないものの、なんとかやるべき事は果たした。ぺこり、と小さく頭を下げつつ、木桶を持ち上げて。)