天高くそびえる霊峰の麓に広がる広大な樹海は生い茂る木々により昼間でも夕暮れのような僅かな木漏れ日しか通さず、「黒い森」と呼ばれている。黒い森の地下には莫大な量の魔力(マナ)が流れる地脈が通っており、黒い森の中心地の巨大な湖に地脈点が存在している。
その地脈点のまさに中央、湖を天然の堀としてその中央に聳える城は、最高位の悪魔が建造した難攻不落の要塞の様相を呈している。最高位の悪魔自身の強さに加え、城の内部の幾重にも張り巡らせた罠や高い戦闘能力を備える使用人たちが行く手を阻んでいるためだ。
それ以前に黒い森の中で乱れに乱れた魔力が黒い森を迷いの森へと変貌させており、入ったら最後、二度と出てくることは不可能とまで言われている。(実際はそうでもないが)
そのため、強大な悪魔が存在していることがわかっていながらも周辺諸国はなかなか手が出せずにいた。徒に兵を送り込んだところで領土の弱体化を進めるだけだった。故にここ何百年もの間、黒い森に足を踏み入れるのは富と名声を求める冒険者のみであった。
しかし、近年になって変化が訪れる。全ての生きとし生けるものはいつかは必ず死ぬ。それは最高位悪魔とて例外ではなかった。城の主だる悪魔が死に、黒い森に満ちた魔力が一時的に薄くなったのだ。これを機に悪魔の城を攻め落とすべく、領主の騎士団や冒険者たちが黒い森へ足を踏み入れることとなる。
一方、悪魔の城では最高位悪魔に使えた使用人たちが、後継者たる”お嬢様”が力を蓄えるまで、なんとしてもこの血を守る必要があった。それは主人たる最高位悪魔に対する忠義であり、また、まだ幼子であるにもかかわらず前代未聞のポテンシャルを秘めた”お嬢様”に対する恐怖からでもあった。
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