希望者募集 2018-04-07 11:12:05 |
通報 |
(不意に眉間を筒井ていた手を握られた。それと同時にやめろ、と言われ渋々辞める自分では無い。もう反対の手でまたもや眉間を軽く押せばなんだか面白くなって来て、クスクスと笑みを浮かべて。「ごめん、ごめん。」まるでじゃれ合う恋人通しの様なこの状況に嬉しくなって、嫌がっている彼に再度確かめる様に「…ねぇ、好きだよ。」となんの前触れのもなく伝えて。傍から見ればほんとに普通の恋人同士の様な今の子の流れ。でも、暗殺者と始末屋という組み合わせは、世間一般のカップルとは程遠い。そんな危険な二人の間にもほのぼのとしたこの時間は大切にしたいと思いながら。「そうだね…、君以外の人間に殺されるなんて真っ平御免だよ。うん…うん、そうだね………ごめんなさい。」(相手の言葉に何故か安堵感を覚えた。今迄の会話で彼からの愛情など、微塵も感じる事が無かったが[誰がお前を殺すんだ。]と一言で安心した。ましてや、一方的な愛し方に毒まで持った自分の事など拒絶するに違いない…と思っていたが、まだ相手は、自分の事を殺そうとしてくれている。自分にとって、殺しとは愛情表現の1種であると思ってしまっているのだ。死と愛は紙のような薄い区切りの中で、裏と表、陰と陽の様に重なっていてたったほんの少しの出来事で…強く引き寄せれてしまう。そんな儚くも、尊いこの2つが自身にとっての最高の愛情表現であり、自分の最高の死に際でもあるのだ。上記の台詞で最後に述べた謝罪の言葉は、嘘偽りの無いもので呆気なく下げられた頭と共に発せられた。すぐさま上げた表情は、まるで主人を心配する犬の様な表情でクーンと寂しげな鳴き声が聞こえて来てしまいそうな、そんな顔で暫し相手を見つめた。猫だの犬だの様々な動物に例えてしまう自分に少し楽しささえも覚えてしまい…。)
「あーん…。」突如向けられたフォークになんの躊躇いもなくかぶりつく。彼からあーんされた嬉しさにほんのり頬を赤くしながらもモグモグと咀嚼し数回噛み砕けばごくりと飲み込んで。きっと、警戒して食えなかったためさしずめ毒味かなにかだろう。相手の行動の真理を考えながら、飲み込んだ後何事もなくニッコリと微笑んで言葉には出さないが、それは毒の入っていないことを示していた。「俺以外の相手?…、馬鹿言わないでよ、君以外の相手なんかと一緒になる気なんてさらさらないし、君じゃないと意味がないんだ。」すこし強めの口調で、眉間に寄った皺は先程の彼のようで。相手が、こうも頑なに自身を受け入れないのは、彼の弱く、ひた隠しにしている部分を自身でも受け入れきれていないから。もしかすると受入れる事さえも拒否しているかもしれない相手に、頑固だな。と内心思いながらもそらが彼のこの凛とした誰も近づけさせない強みを形成している一つなのだろう。さして、相手が使い物にならなくなれば、彼の後ろに付いているその組織が彼を無事生かしておく、とも考えにくい。今彼の中での均衡を崩す事はしない方が利口な判断だと確定してこれ以上は、言わずただ自身の手を拒むその手を追うようにして優しく掴めば、手の甲に軽く唇を押し当て、お伽噺の話の王子の様な一連の流れをした後ただ優しくいつも通り、そう何時とも変わらない笑顔を向ければ)
────分かったよ。でも、僕はなかなか執拗い質でね。君が、振り向いてくれるまでこうやって愛を囁き続けるさ。……君が助けを求めるその時までね。
トピック検索 |