狼。 2018-03-31 22:48:57 |
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え? あっ…
(守ると言いつつも突き放すような言葉を並べてしまったにも関わらず、己の身を案じパン屋に足を運び食すことを楽しみにしていたはずの彼の言葉に驚いて。一気に気を緩めてしまったために全身に力が入らず、扉を開けて出ていく彼に声を掛けることも追いかけることもできずにいて。ただ呆然と扉を眺めては、先程周囲と共に心にもない言葉を交わし冷徹な態度を取った過ちに、己は彼を、亜人を傷つけ“恩を返せなかった”と漠然とした恐怖が襲い掛かり、全身から血の気が引き青褪めては鎖を握っていた手が震えて。鎖を放し震える手に視線を落として暫く見詰めていた矢先、再び扉が開く音が聞こえ顔を上げれば離れていったはずの彼が目の前が戻ってきていて。酷なことをした無力な自分を恨むでも蔑むでもなく、礼と感謝を伝える彼の言葉に胸が苦しくなり「ごめんね、ありがとう…ありがとう、アスター」溢れる大粒の涙を流しながら与えた名を呼んでは、震える手で差し出された花を受け取って)
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