若き将校 2018-03-28 22:31:14 |
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(随分と長い時間がかかってしまったが漸く彼の存在を肯定付ける一言に頭頂部から足の先までに電流が落ちた感覚が襲い、一瞬心臓は脈を打つのを忘れてしまい全ての感覚器官が遮断されて看護師の言動のみが脳内へ。通路を歩く時でさえ足底が地面を踏みしめる感覚は無く、喜びとは別の浮き立つ思いで不安と期待胸に抱きながら指示された番号と同じ部屋の前で足を止め。アルバムに仕舞われた一枚の写真と共に機体を飛ばしたあの戦場で彼がこの場に居なくて良かったとどれ程思った事だろう、同時に彼が姿を消してしまった事に対してどれ程悲しみと憎しみを抱いた事か。遂に探し当てた扉の向こう側はまたものけの殻ならば最早諦めるしかないと最後の願いを戸を引く腕に込めて、音も立てずそっと運命の瞬間を迎えて。ーー眩い木漏れ日を全身に浴びる今にも折れてしまいそうな細い背、かつて細身でありつつ締りのあった肉体は肉が下げて骨と皮のようだがしっかりの伸びた背筋は彼のものであると語り掛ける。間違い無い、そう脳が判断を下した時には既に彼の身体を抱き締めていて。奥歯を噛み締めた唇からは投げ掛ける言葉が出てくる事は無く、ただ、ただ彼の存在を確かめ繋ぎ止めてい続けるように息苦しい程抱いて首を深く垂らさせ)
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