若き将校 2018-03-28 22:31:14 |
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(遠くなる病院の建物、この場所から軍の基地は見えないが車窓からぼんやりと見上げた深い臙脂色に染まった空に、光に反射して輝きを放ちながら滑るように空を駆ける機体を瞳に移せば、昼間からまるで麻痺したように何も感じていなかった心が急に激しい感情の波に襲われて。抑える事も出来ない嗚咽を漏らしながら涙を流し、顔を覆う。しかし心を抉るような深い悲しみを受け止めてくれる親友はもう居ない、自ら彼を置き去りにして来てしまったのだから。ーー辺りが藍色に包まれた頃、車を降りて汽車へと乗り込めば車窓を流れて行く暗い木々を眺めつつ、やがて全てを失ったその男は乗客の誰も降りぬような山奥の小さな駅へと降り立てば、後ろを振り返ることもなく、一人ひっそりとした療養所へとその姿を消して。月明かりに照らされた木々に風の音だけが響く、星の瞬く夜の事ーーー…)
ーーー前編 完結ーーーー
本当にお付き合い頂いてありがとうございます。
既に切なさMAXですが、これにて前編は完結とさせていただきます。
後編もぜひぜひ、よろしくお願いします。
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