罪独 2018-03-11 18:58:21 |
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( 彼女の口からこぼれ掛けた何かに淡い期待を抱いてしまった。年下の自分何かを彼女が意識などするわけ無い。きっと大したことのない言葉だ。然し、それでも頰を撫でる手と、夕陽から照らされる彼女の美しい表情に酔う事くらいは許されても良いだろう。助けられて良かった、その一言が僕の身体に潜む何かを紙のように引き裂いた。嗚呼、そうだった。僕は一人じゃなかった、そう、改めて確認の出来た瞬間を迎えた。彼女が外を向いたのを機に、火照る顔を首をぶんぶん、と横に振って熱を冷ます。そして自身も窓へと目を向ける。目にしみる光に目を細め、次に着く見知らぬ土地への不安を掻き消すように自身の服を力強く握る。彼女の口から溢れた言葉に混じる微かな溜息に気付くと、余裕のないのが分かる。「...はい。」小さく、静かに返事を返すと終点のアナウンスが流れる。外もすっかり暗くなり、あの宿があった場所よりも周りは静かだ。村、と言えるだろうかと思うくらいの民家の少なさ。宿はあるのだろうかと思いながら、電車を降りて駅を出ると「宿、探しましょう。」と提案を。
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