罪独 2018-03-11 18:58:21 |
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…、…おやすみ。
(突然手を握られて驚いた。しかしその手から、真っ直ぐに向けられる視線から伝わってくるのは彼の想いだけで、父と同じ男性の手──その父を殺してしまった手だというのに恐怖は少しも感じなかった。それなのに一言も発せなかったのは、次々と向けられる言葉に抱いてはいけない感情を抱いてしまったから。大切、という響きに心臓が小さく跳ねさえした。それが後ろめたくて、布団へ潜っていく彼を追いかけることもできず呟きを残して部屋を出る。脱衣所で髪を乾かしている間も感情と手の温もりは消えず、再び横たわる彼を見た時先ほど感じた喜びが錯覚ではなかったと思い知れば起こさないよう枕元に膝をついて「──私も…誠くんがいなければ、白黒のままだった。誠くんが色をつけてくれたの。…助けてくれて、ありがとう」ずっと口にしてはいけないと閉じ込めていた、罪を肯定してしまう言葉を想いのままに囁く。この子は優しい。こんな自分を大切に思ってくれる、罪を犯してしまうほどに。それが嬉しくて悲しかった。「私も、誠くんが大切。…誠くんだけが大切。だから、絶対に守るから」人殺しなんかにさせはしない。そのためなら何だってしようと決意を込めて呟けば、おやすみ、と改めて告げてから自分の布団に入り込む。もしもこの日々が終わりを迎えたその時のことを考えつつ、終わりが一日でも遠のけばいいと願ううちに、いつしか体は浅い微睡みに包まれて)
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