主 2018-02-10 20:51:48 |
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>水上
――士道不覚悟也。
新撰組三番隊、伍長・水上五郎。
詳細。
逃亡隊士一名を誅殺するも、逃亡幇助の遊女を意図的に見逃そうとした疑い有り。
検分役が現場にて伍長・水上に接触、問答。
水上。嫌疑を認め、自刃して果てる。
なお、遊女については検分役が自ら追走。これを誅する。
以上。
申し上げ奉り候。
十番隊隊長・大河遥姫が検分――。
(/承知致しました。一度相談していただくか、或いは『隊士を唆したのは遊女であった為に黒幕を誘き出すためにあえて一度逃がした』のようなやり方も出来たように思います。けじめをつけられたのでしょうが背後様の“水上五郎”という人物に対して、あまりにも愛の無い結論を出されてしまった事がただ残念で寂しかったです。)
>all(上記蛇足につき蹴可)
――では。
(一通りの報告を終えて。襖を開けて廊下へ出ると、果たして予想通りそこには多くの隊士が集まっていた。確認しなくてもわかる。三番隊の隊士たちだろう。ひそひそと囁き合い、こちらを睨む様はまるで仇敵を見つけたかのようだ。成程、間違っていない。経緯はどうあれ彼らの伍長を殺したのは私なのだ。言い訳は無い。表情を消したまま一歩踏み出せば、三番隊の人垣はゆっくりと割れるように道を開ける。が、一人。一人だけ、歳若い隊士が道をあけなかった。「……何か?」口を開いて問う。若い隊士は今にも飛び掛りそうに眦を吊り上げたが、すぐさま横にいた隊士から取り押さえられて人垣へ消える。歩を進めるたびにみしみしと軋む廊下の音。背後から小さく投げかけられた『人殺し』という言葉を、きっと生涯忘れまい。水上五郎という伍長はこんなにも愛されていたのだ。)
ッ…………! いちのじょーさん……ゴメンねえ。助けてあげられなくてゴメンねえ。
(やがて行き着いた誰も居ない縁側で腰を下ろして。冷え切った夜闇の空気で肺を満たしてから、唐突に隣にあった黒塗りの柱へ額を叩きつけた。誰にも見られないように身体を縮込めて。声を掻き消して、すすり泣いた)
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