主 2018-02-10 20:51:48 |
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>姉さま(晃さん)
――笑って。姉さま。
(口をついて、そう出た。気持ちをありのまま吐露してしまった今、そこには打算も何もない。ただ――『守らせて、ください。 』。そう告げた彼女をみたら、いつのまにか口走っていた。だって見てしまったから。“やはり困らせてしまったのか。失望させてしまったのか。いや、そもそも信じてもらえたのか?” そんな想いは、彼女の表情をみて吹き飛んでしまった。今にも泣き出しそうなその声を聞いて。その眼差しをみて。――嗚呼、と胸が痛んだ。なぜ、私はまた泣いてしまったのだと。)
ゴメンね。ゴメンね、姉さま。私、そんな顔をさせたかったんじゃないんだ。笑って。ね? ほら、こう……やって……。
(ぐしぐしと目元を荒く擦って。かぶりを振って。身体ごと彼女へと向き直った。なぜだか震える両手の人差し指を自らの口角それぞれにあてがって無理やり笑顔を作ってみせる。瞳を閉じた拍子に涙の粒がいくつか宙空へ散った。)
私、頑張るから。またいつもみたいに笑うから。守らなくても、大丈夫。私ね、強いもん。だから、だからね……姉さまも……。
(――笑って欲しかった。人を笑顔にするには、まず自分が笑わないといけない。もしも“あの時”笑えていたなら。ウソでもなんでもいい、笑顔を作れていたなら。母さまはきっともっと、安心して逝く事が出来たのではないかと。――まるで腫れ物に触るように。一気にまくしたてるような早口と、震える唇には自分でも気付かないまま、彼女へとゆっくりと手を伸ばして)
>正之助くん
! なにかあるのかしら。
(なにやら難しい声音で唸った彼をみて、ありゃー、やっぱり困らせちゃったかなー……と思案しだした直後に口を開いた彼に、目を輝かせる。きっときらきらと瞬いてみえるに違いないほどに。なんだろう。どんな話が聞けるんだろう。真面目な彼のこと、明日の夕餉にでてくるダイコンの煮物情報(情報源:十番隊士)などという心底どうでもいい話ではまさかあるまい。距離をとったのを忘れて二歩三歩と近づいて耳を欹てた)
>ジュリアスさん
うわぁ……。
(ほんの冗談のつもりで言ったのだが、本当に猫に話しかけ始めた彼をみてそんな感想しかでなかった。母国語だろうか、イントネーションそのものが異なる言語は、少なくとも猫語ではなさそうだった。多分なのだが、猫語は『にゃー』とか付く気がする。たぶん。やはりあれだ。異人相手に日本の冗談というのがよくなかったのだ、これは反省しかない。見れば、先ほどまであんなに彼に懐いていた猫が面食らったように一言も発さないではないか。いよいよ二重の意味で申し訳なくなってきた。だが。「あー……、あのですねえ」と、言葉を切り出した直後にくりっとこちらをみた彼が【あなたも聞いてみてください】などと提案してきたものだから堪らない。「え”!!」と思わず素の声で反応してしまい。……私もやるの? あれを?)
……………………に、にゃー。
(しばし猫をみつめて、ぐるぐると瞳を迷わせた挙句にようやくでた言葉はそんなで。もうやだ帰りたい。心底そう思った)
>栄さん
――あった。これだ。
(屯所の元・客間の一室。その書棚からいくつか取り出した帳票をみつめてから、そのうちの一つを手にとって。手配書――“仏殺のお絹について”。どうにも気になって、調べにきてしまった。というのも、以前に銀之助さん――局長から聞かされたことがあるのだ。集めた人相書の中でも特に手を焼くとみられる人物たち。そしてその筆頭に上がったのがこの“仏殺のお絹”だったはず。なんでも、高齢ながらにして卓越した槍術の使い手で流派は不明。一部ではかの宝蔵院流ではないかと囁かれている。なによりあの局長をして、『正面から戦り合ったら勝てないかもしれない』と言わしめるほどだと言う事。人相書を見る限りではただの老いた尼僧にしかみえないが――。よくみると別の資料が重なっている。別に集めたのだろうか。紙は黄ばんでところどころ文字もかすれていた)
……なになに。
(書いてあるのは“仏殺のお絹”についての特徴。さらに殺害された被害者。そして、来歴。……“仏殺のお絹”は元々小さな寺院の比丘尼であった。寺院には他に老年の僧侶が一人いた。そして行き所のない、身寄りのない子供たちが複数名。――いずれも、皆殺しにされている。原因は書かれていない。「…………。」思わず息を呑む。年齢もまちまちで男女も恐らく混合。恐らく、というのは文字がほとんど滲んでしまって読めないからだ。一番年齢の大きな子供で十九とある。名前は――小町、と読むのだろう、女の子だろうか? 「私と、同じ歳……。」小さく呟いて、他に有益な情報はないかと目を走らせた)
>薫子ちゃん
(覚悟をしていたからだろう。鍵をかけていたはずの扉が開かれ、その向こうからゆっくりと姿を現した彼女をみてもさほど動揺はしなかった。だが、『遥姫(はるき)』と呼びかけられた事には一瞬だけ目を見開いて。だが続いての“言葉”にその目つきは些か鋭いものへと変化する。まるで小馬鹿にするような言い回し。一瞬、ほんの一瞬だがざらっとした感情が心を支配する。が、バッと口元を覆った見覚えのある扇子で気を吐き、ふーっと息を漏らす。そうだ、このコは昔から――)
……変わんないね、そういうとこ。薫子ちゃん。
(『遥姫(はるき)』という今の呼び名。毒の件。それらを知っているという事は、もっとずっと前から調べてあったのだろう。別段隠すつもりもないが、詮索されたい内容でもない。咄嗟に周囲へ気を探ったが、先ほどの彼女の護衛の気配さえ感じ取れない。まぁ、うまく隠れているのかもしれないが。)
どうもこうも。もしかして気にしてくれてたんだ?
(肩をすくめて軽口で返す。眼前の相手は馬鹿ではない。それが【配慮】のつもりなのだろうか。まったく、と苦笑してしまう。もっと他のところに気を遣って欲しいものだ、と)
>めぐさん(仁さん)
めぐさん? ……真面目にやって?
(ばいーんと壁に跳ね返ってなんだか楽しそうに盛り上がってる彼女に白い目を向ける。ぷろふぇし……? 何といったのだろう。最近の彼女の言語はよくわからない。正之助くんじゃあるまいし、異国かぶれなんだろうか。ありうる。この人すぐ影響されそうだもん。などと思考するうちに端についてしまった。)
――さて。
(雑巾を床へ沿えて、同じ箇所を数度擦る。乾拭きの雑巾は粗目だったがこれから板を傷つける事もなさそうだ。両手を乗せて、腰を上げ、脚を跳ね上げて疾く床を蹴る。距離そのものよりも正確さ。斜めにずれたりしないように折り返し、みるみる彼女の担当陣地への距離を縮めてゆく。ちなみに彼女の言い分と違って、今のところ別に楽しくはない。と、そこで誰かが道場へ足を踏み入れるのを感じた。隊士だろうか。まぁ、気にする事でもない。顔を向ける事なく雑巾がけを続けようと意識を戻した瞬間、耳を疑った。『お――――いみんなっ大変だ! 矢車隊長と大河隊長の掃除対決がみれるぞっ!!』)
>いちのじょーさん(壱之丞さん)
お買い物?? それにしてはー……
(ちらりと相手を見やれば、持っているのは槍とお酒の包みだけ。お酒はまぁいつもの事としても、何か買い物をした形跡は見当たらなかった。)
……もしかして私お邪魔しちゃった?
(なんだかんだと付き合わせてしまった時間は馬鹿にできないもので。「えっと。これからでもだいじょぶなら私手伝うよ?」とどっちへいくつもりだったのかと、右に左にと指をさして)
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