健二 2017-09-28 22:32:08 ID:c196a580b |
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申し訳なさそうにビニール袋を受け取るとその中に吸い殻を入れ。なんだか出鼻で失態を見せてしまった気分。彼女は自分よりずっと年下だが、ずっと大人でしっかりしていることを改めて思い知らされる。
始めて会ったときもそうだった。
生まれて始めて自分に向き合ってくれて、そして真剣に俺をまっとうな道へ引き戻してくれた。それまで親も教師も見てみぬフリで、なにをしようが強く咎められたことなんてなかった。でも、この人は違った。始めて会ったのに、会ったばかりの俺に「そんなことはダメ!」と心の底から叱ってくれた。そして、優しく包んでくれた…。
あのときの温もりは…忘れられない。
「大会、どうだった?ちゃんと参加できた?」
新体操部の団体戦全国大会。それに参加するために、この少女は俺に身体を売ったのだ。それほどまでに、どうしても参加したかったのだろう。それまで新体操なんかにはさっぱり興味はなかったのだけれど、彼女がその競技者で、しかも全国大会まで進む実力をもっていることを知って、それから少しずつ関心が強くなっていた。
思い通りの演技ができただろうか。結果はどうだったのだろう。ずっと気掛かりだった。
街頭が灯り始めた坂を二人並んで下っていくと表通りが見えてきた。
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