健二 2017-09-28 22:32:08 ID:c196a580b |
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(金曜日の夕どき。日が沈みかけて、表通りの交通量も増えてきたころ、通りから路地を入って急な坂を登りきったところにある女子校の正門前で、健二は気だるそうに立っていた。都内でも有数の名門お嬢様学校。ここに学校があるのは以前から知っていたが、この坂を歩いて登ったのは始めてだ。でも健二には、この坂を登って、およそ無関係で場違いなこんな場所に立つ理由があった。
彼女を待っているのだ
。
彼女といっても、いわゆる「お付き合い」している相手ではない。まだ…)
ふう……
(溜め息をついて、何本目かの煙草に火をつける。さっきからこの学校の先生だろうか職員だろうか、その視線が痛い。警備員はいまにも彼に歩み寄って声をかけそうなふうに、遠目にジロジロと見ている。下校を急ぐ女子生徒たちは、もの珍しげに健二を見て、キャッキャとはしゃぐような素振りをして前を行き過ぎる。
こんなとこ…苦手だ…。
でも、待たなきゃならない。誘ったのは自分のほうだ。
彼女はまだ出てこない。
吹奏楽部の練習だろう、けたたましい音楽も終わってしばらくたった。日は暮れなずみ、もうすぐ夜のとばりが降りようとしている)
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