ノクティス 2017-01-28 19:21:40 |
通報 |
はいはーい、王子様の仰せのままに、ってね。だいじょーぶ、今日はもう本当に撮らないから。瞼の裏に焼き付けるだけにしまーす。
(相手の生意気な様ももう随分と見慣れたものだ。へらり笑ってカメラを受け取りながら軽口を交えて首肯してみせる様といい、周りからはどう見ても仲の良い友達同士にしか見えないだろう。二人の間にあった甘ったるい熱っぽさは当人達の記憶だけに留まり、そういった雰囲気は自然と霧散していた。恋人として触れ合うのも好きだが、こういう風に気の置けない友人として関わるのも好きで。掴んだままであった手をそろり離せば、自身の身体に付いたままの砂粒を軽く払いながらふんふんと楽しげに鼻歌を歌い、歩き出す。桟橋までの距離はそう遠くない。精々100mあるかないかといった具合だろう。流石に毎日一緒に居れば、話したいことなどは夜になる前に全て話してしまっている状態だ。鼻歌を零しながら考えるのは次の話題について。けれども深く考えたところで直ぐには出て来ないし、そもそも考えている時点でアウト、というか。考えるだけ無駄だという結論に至る頃には桟橋の近くまで辿り着いており。気を取り直して海を見遣れば、もうとっくに太陽は沈もうとし始めていた。温かな色が消えてしまうというだけで少し寂しい気持ちになるが、天を仰いで目を動かせば交代とばかりに薄らと月が昇っていることに気付く。太陽の反対側からじわり染みるように広がり始めた冴えざえとした夜空に、ふと、息を飲んだ)
…夜って、やっぱりノクトの色だね。
(ぽつりと紡いだその言葉は、小さいながらもこの場の静けさに溶けることなく空気を震わせる。透けるように柔らかくも確かに光を放つ月と星がとても綺麗で、気が付けばその空に向かって一枚、ぱしゃりとシャッターを切っており)
うんっ、良い写真撮れたかも…!
トピック検索 |