ノクティス 2017-01-28 19:21:40 |
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(舌同士を触れ合わせるなんて初めての経験で、ぬるりとしていて温かい、何処か不思議な感覚に僅かながら腰が引けてしまう。けれど、ゆっくりと動かされるそれに安心したのか。ほわり蕩けた表情で少しずつ身体を弛緩させてゆき。しかし、相手の動きが突然変わればびくんと肩を揺らして驚いた様相露わに。涙がじわりと滲んだ。舌を引っ込めることも許さないような吸い上げ、甘噛み――相手を煽ったのはこちらだと言うのに、自身の欲を引き摺り出されることには酷く怯えを抱いてしまう。ああしたい、こうしたい。もっと。もっと。足りないからもっと。そんな浅ましくはしたない感情が彼に露呈するのが嫌で、けれども、欲に任せてしまえば楽なのだと思う。だって、こんなに気持ちいい。だって、ノクトは自分にありのままの欲を向けてくれる。だって…だって、こんなにも幸せなんだから。彼の背に縋っていた右手は思いを重ねる毎に少しずつ、彼を包み込むようなものへと変わる。相手の欲も想いも全部受け止め、受け入れ。そして、応えるように舌を伸ばした。最初は恐る恐る。次第に情熱的且つ扇情的な動きをみせ。先程までの及び腰など今では見る影もない。軈て離れる唇、次いで触れ合う額。互いの皮膚に当たる荒い呼気はやけに熱っぽかった。何処か苦しげな彼の顔を見詰め、改めて感じた愛おしさに柔い微笑み浮かべては)
――…じゃあ、さ。一つだけ聞かせてよ。ノクトは…ここでやめたいの?
(先へ進むのなら今まで以上の覚悟が必要で。けれど、彼が望むのなら。その一心で言葉を紡ぐ。否、違う。本当のところはそれだけではない。誰よりも先を望んでいるのは、本当は自分自身――。己はどうしたいかを伝えないまま相手に答えを求めるのは狡いことだと自分でも思う。顔には自嘲の色が滲んだ。手持ち無沙汰となっていた左手は緩やかに相手の横髪を梳く。手に取った端からするり流れ落つその艶やかな黒は、重力に逆らうことなくこちらの頬へと降りかかってきた。さらさらとしたそれは擽ったくて、気持ち良くて。くるりと人差し指に巻き付けてみたり、指の腹で優しく撫でてみたり。答えが返ってくるまでの間、内心疼く気まずさ誤魔化すように手を動かし続けて。一方の右手はゆったり、相手の背を一定のリズムで撫で続けるばかり)
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