蟲 2016-11-26 12:01:37 |
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>ルリヲ
(底抜けの食欲を言葉にするならいっその事、それも個性の一つなのだろう。喰えども食えども満たされない胃袋を少しでも穴埋めしてやろうと、渡されるだろう先の干し肉を待ち侘びて。褒め言葉よりも肉が欲しいと思うのは犬ころでさえ褒め言葉を望むのだからそれ以下の畜生とでも。再び取り出されたその包みに両の眼を奪われるとその動きを逐一と逃さずに追いかけて、渡されたそれを手の内にしては人によってはたかが干し肉。されど飢えに飢えた胃袋の蟲にとっては極上の肉に違いなく" まあ、おいしそう "そうとでも言いたげに口角を上げて。ぺたりとその場に座り込んで包みを開き。干された固い肉を唾液を塗すことで少しでも柔らかく戻しては、むしゃり…むしゃり…と食べ始め。その中で何やら仕度をしているその様子をぼんやりと眺めればクルリ、機械人形か梟のように頭を垂らし「 黒鈴はいま起きたばっかりよ。ねむたくなんて無いわ 」出された掻巻を頭から被されればそれの温かさに心が震え、されど納得がいかないと頭は垂らしたままに不満を訴えて。温かいそれを落とす事無く頭から被ったまま「 おしゃべりしましょ。初めての満月なのに、落ちる姿を見れないなんて我慢ならないの 」己にとって真丸の月は大きな意味を持つと教えられた訳じゃなくとも本能に刻まれるのか、見ているだけで心臓が戦慄くようなのだ。瞳は爛々と冴え渡るし、美味しい食べ物だって手の内に残っているのだ。寝るなんて、なんと勿体ない事か。「 るりを、貴方が少しでも目を離したら…__わたしはきっと、おかわりを探しにいくわ 」にこり、にこり。澄ましたように微笑ながら被さる掻巻の隙間から動き回る彼の姿を見やり、時折ぺちゃりと干し肉に舌を這わせ歯を立てて。謳う様に一人でつらつらと綴るのはなんたる脅し文句か、自分が寝れないからと彼まで道連れにしたがるのは自分本位の我儘でしかなく。"ああ"と吐息を漏らすほどに小さく声を上げれば「 雄の肉だって黒鈴はぺろりと食べちゃうのよ 」おかわりはお前かもしれないぞ、暗にそれを含ませた言葉をしたり顔を浮かべては満悦と続け)
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