蟲 2016-11-26 12:01:37 |
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>千鶴
――くん、くん、…招チャン、いっぱい食べる(ずるり…ずるり…細長い身体を滑らせて距離を詰めれば匂いを嗅ぐ動作を言葉で表しながら鼻を使い酸素を肺に送り込む。生物の匂いと言うのは何処まで自らの鼻孔を心地良く擽り空腹を煽るのだろう、嗚呼お腹すいたなぁ。べろり、と下唇を舐めり食事を目の前にされたように後は食らうだけ。細長い腕を伸ばし掛けたその時に、にゃあごと猫が一声何処かで鳴いた。ぱちくり、拍子抜けをしたように瞬きをすればその声を辿る様にか、満月に導かれてか粘液の足跡を一つ二つと廊下に残しては歩き始め、外へと出向く。「招チャンこっこの方が好き」見つけた、それは庭に住み着く猫の家族。目当ては大きな母猫なんかじゃない、巣の奥に守られるように丸まり眠る数匹の子猫。ギラギラ、と月夜に瞳を光らせて「美味しそお」生唾をごくりと飲み込み手の平ほどしかない生まれたばかりの子猫の尻尾を掴み、母猫から引っ掻かれるのも気にせずに「ニャアゴにゃあご。招チャン何言ってるかわかんないョ」悪気なんて感じないのだ、生き造りの魚を食べるのと同じ気持ちで有り罪悪感だって一つも無い。鋭い歯を突きさす様に柔らかな子猫の柔らかな腹肉へ突き立ててガヴりと貪り付き滴る血液をソースに変えて未だ未発達な骨ごとがりがりと、子猫の顔だけを地面に落せばもう一匹へ手を伸ばし。残る子猫を全て食したところで指をペロペロと舐めり「招チャンまんぞく」ごろん、と身体を横に倒し真ん丸の月を見上げる。独り言のように漏らした呟きが静かな夜に響き、この不幸を嘆くのか母猫がどこか遠くてにいにい鳴いている。それはとても心地よくて母親の子守歌のように両目を伏せ、鋭い歯は生き血を啜る事で変化を遂げる。体に浮き出ていた入れ墨がスーと引き、異常なまでの食欲が消えた。モゾモゾ、と身体を動かして倒していたその身を起こすと「招チャンのとおさま探さなきゃ」はた、と思い出したように名付け親を思い。きょろきょろと周囲を見渡して)
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